天鐘(8月10日)

明日の盆休みに、奉公に行った息子が3年ぶりに家に帰ってくる。それが楽しみで、父親は前の晩から眠れない。戻ってきたら、あれもしたい、これもしたい―。落語の『藪(やぶ)入り』である▼久々に一緒に出かけようか。品川の海を見せてやりたい。ついでに鎌.....
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 明日の盆休みに、奉公に行った息子が3年ぶりに家に帰ってくる。それが楽しみで、父親は前の晩から眠れない。戻ってきたら、あれもしたい、これもしたい―。落語の『藪(やぶ)入り』である▼久々に一緒に出かけようか。品川の海を見せてやりたい。ついでに鎌倉。そして富士山、名古屋に行って、金比羅様も…。一日じゃ無理と女房に笑われるが、今も昔も変わらぬ親心である▼帰省の季節になった。だが今年は、旅立つ方も、迎える方も、思いは複雑だ。再びコロナが猛威を振るう。ふるさとの両親や友達に会いたい。墓参りもしたい。でも、おじいちゃん、おばあちゃんのことを考えれば…うーん▼帰省への国のメッセージは分かりにくい。加えて各知事にも濃淡がある。「帰省は控えて」と東京都知事。対して青森、岩手は一律自粛は求めていない。都内の県出身者は「では、どうすれば…」▼そもそも、ウイルスは下火と考えたか、「Go To」と、国は早々と旅行者の背中を押した。その後の感染者増は見ての通りだ。手に負えなくなったか、首相の言葉は減り、「結局、移動の判断は国民まかせ」の声が漏れる▼思えば、今日は『山の日』であり、併せて『道の日』、語呂合わせで『宿の日』でもある。何とも旅情を誘われるが、大手を振っての旅ははばかられるような“特別な夏”。あの「藪入り」の父親の困った顔が浮かんでくる。