資源エネルギー庁や原子力発電環境整備機構(NUMO)は、2017年7月公表の(高レベル放射性廃棄物の最終処分地の適性を表した)科学的特性マップに基づいて対話型全国説明会を行っている。[br] 処分地選定に向けた方向性は合っていると思うが、公表当時のような関心を持続的に国民に持ってもらうためには、取り組みに関する情報発信を強化していく必要がある。[br] マップ作製を含めて議論する同庁の調査会委員を務めたが、候補地を拙速に絞り込まずに、公平性や透明性を守りながら選定を進めてほしいと言ってきた。[br] マップの公表から3年がたったが、この間に候補地が決まるような話ではないし、今後数年で一つの方向が見えてくればいいのではないか。 その上で、説明会の現状を半年に1回ぐらいの頻度で公開していくなど、注目度を上げる方策が必要かもしれない。取り組みが滞っているなら、なぜ滞っているかを報道機関に発信してもいい。[br] 一般向けの説明会では、人によって疑問とする部分が異なることを踏まえつつ、何がポイントなのかを十分にかみ砕いて説明することも重要だろう。 例として、地下水が豊富な日本で(地下深部に廃棄物を埋める)地層処分が可能かと疑問を持つ人は多い。長い年月で廃棄物が地下水に溶け、回り回って地上に漏出しないかが鍵になるからだ。[br] 処分地が決まっているフィンランドの古い岩盤の地下水年代が、数十万年~数百万年であることが分かってきた。一方で、日本の岩盤にも場所によっては同様に古い地下水が存在することが明らかになってきている。このことは、地震の多い日本でも地下水の移動しにくい地下環境が存在するため、必ずしも処分が難しくないことを示している。[br] こうしたポイントを絞った説明をしていけば、参加者も腑に落ちるのではないだろうか。参加者の疑問が解消されなかった理由を是正していき、国民的議論につながるように持っていくことが望ましい。[br] 六ケ所村には海外からの返還ガラス固化体があり、保管期限は迫っている。国やNUMOが処分地選定に向け、いつまでに何をやるのか、スケジュールを可能な限り示し、それに向けた努力を見せていくことが大事だろう。[br][br] 【略歴】よしだ・ひでかず 1986年、名古屋大大学院理学研究科博士課程(前期課程)地球科学専攻修了。理学博士。2000年に同大博物館助教授、10年に同大博物館教授を経て20年から現職。全国大学博物館等協議会会長などを歴任。最終処分地問題や科学的特性マップの在り方について議論する、資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会(放射性廃棄物)委員も務めた。58歳、宮崎県出身。