時評(8月4日)

政府が強く主張してきた「戦後最長の景気拡大」は幻だった。過去最長だったいざなみ景気(2002年2月~08年2月までの73カ月)を抜いたとされた12年12月からの景気拡大局面は、18年10月に終了したことが、政府の有識者による会合で公式に認定.....
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 政府が強く主張してきた「戦後最長の景気拡大」は幻だった。過去最長だったいざなみ景気(2002年2月~08年2月までの73カ月)を抜いたとされた12年12月からの景気拡大局面は、18年10月に終了したことが、政府の有識者による会合で公式に認定された。同年11月から後退局面に入り拡大期間は71カ月、いざなみ景気に次ぐ長さにとどまった。[br] 現政権誕生とともに回復に向かった景気について、政府は19年1月時点で「拡大は74カ月となったとみられる」と事実上の景気最長宣言をした経緯がある。エコノミストの間では消費動向など各種経済指標を基に「既に景気の山は過ぎた」との見方が大勢だった中で、アベノミクスの成果を誇示する狙いがあったのだろう。[br] だが勇み足では片付けられない。政権首脳はその後も「最長景気を達成しアベノミクスは今なお進化を続けている」と、強気の姿勢を堅持してきた。客観的経済指標を軽んじ、正当性をごり押しする経済運営の罪深さが問われるべきだ。[br] 景気は山と谷を繰り返し、谷から山までが拡大期、山から谷までが後退期だ。有識者による内閣府の研究会は、さまざまな経済指標を基に12年末から続いた景気の山を初めて18年10月と認定した。異次元の金融緩和に財政出動、円安による輸出企業の好業績が主導した景気拡大は、米中による報復関税の応酬で輸出が鈍化した時点で、終息したことになる。[br] いざなみ景気の長さに届かなかった上に、実質経済成長率はいざなみの年平均1・6%を下回る1・2%と横ばいに近い。実質賃金の伸びはマイナス0・5%だ。「実感なき景気拡大」がアベノミクスの内実だった。[br] しかし政府の景気判断を示す月例経済報告は、コロナ禍直前の今年2月まで「景気は緩やかに回復している」と強気の表現を続けた。現実にはコロナ禍に見舞われる1年半前に景気は下り坂に入っていたのに、この間、拡大期に2度延期した10%への消費税増税を実施、消費を一段と冷え込ませる引き金になった。また税収増加を見込んで歳出膨張策を加速したが、19年度の税収は、当初見積もりに比べ4兆円も減少した。現実と向き合わない強引な政策が、こうした失態を招いたのではないか。[br] 本年度の実質経済成長率がリーマン・ショック時(08年度3・4%減)を超えて落ち込むのは確実だ。底は脱したとの見方もあるが、保身優先の政権ではまともな経済復興は望めない。