【連載・八戸三社大祭「伝統の原点へ」】第1部(5)苦難の先に

山車の運行は取りやめとなったが、八戸市中心街では連日、山車組によるお囃子が響き、祭りの雰囲気を伝えている=18日、同市
山車の運行は取りやめとなったが、八戸市中心街では連日、山車組によるお囃子が響き、祭りの雰囲気を伝えている=18日、同市
「ヤーレヤーレ」。1日夜、八戸市中心街に突如として子どもたちの元気な声がこだました。あいにくの雨の中、多くの人が足を止め、今年は聞くことがないと思われた、お囃子(はやし)の音色と掛け声に耳を傾けた。 300年の節目を迎え、大きな盛り上がりが.....
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 「ヤーレヤーレ」。1日夜、八戸市中心街に突如として子どもたちの元気な声がこだました。あいにくの雨の中、多くの人が足を止め、今年は聞くことがないと思われた、お囃子(はやし)の音色と掛け声に耳を傾けた。 300年の節目を迎え、大きな盛り上がりが期待された八戸三社大祭。だが、新型コロナウイルスの影響で、各神社の神事のみの開催となり、華やかな山車の運行は取りやめとなった。“異例の夏”を前に市内には寂しさが漂っていた。[br]   ◇    ◇[br] 市民らの思いを受け止め、立ち上がったのが全27の山車組で構成するはちのへ山車振興会。各山車組が交代で連日出演するお囃子の披露を企画した。31日からの祭り期間中にも催しを準備。同市三日町のマチニワに風流山車を展示し、郷土芸能団体の演舞も予定する。関係者は「祭りの雰囲気だけでも楽しんでほしい」と願いを込める。[br] 山車運行の取りやめが決まって以来、「山車組としてできること」を模索してきた。感染症対策と祭りの意義をてんびんにかけ、たどり着いたのが「伝統の継承」だ。その一つとして、子どもたちに“次の夏”に向けた意欲を保ってもらおうと、お囃子披露の場を設けた。六日町附祭若者連責任者の田端隆志さん(66)は「子どもたちに楽しんでもらうことが一番。その思いが、祭りを担う人材を育てる」と将来を見つめる。[br]   ◇    ◇[br] 同市の長者まつりんぐ広場では、各山車組の制作者たちが3神社の附祭グループごとに分かれ、技術の継承などを目的に、昭和30~40年代の伝統山車作りに挑戦する。ただ、当時の制作方法を知る人はゼロ。現在とは違う落ち着いた色合いや人形の配置の再現に悩みながらも、意見を出し合い、一つずつ工程を進める。[br] 長横町粋組代表の菅原鉄也さん(41)は「自分たちにとっても新たな挑戦。若者には珍しく、年配者には懐かしい山車を見せられるだろう」と意欲を示す。[br] マチニワでの山車展示期間は31日~8月16日で、本来の祭り期間中には郷土芸能団体が登場し、花を添える予定。マスク着用の呼び掛けや三密回避を徹底しながら、今できる最大限の祭りを市民らに届ける。[br] 振興会の小笠原修会長は「祭りは多くの人に見てもらってこそ。今年は伝統の継承に向けた一年となるが、再び笑顔と活気にあふれた祭りになることを願っている」と力を込める。山車の運行は取りやめとなったが、八戸市中心街では連日、山車組によるお囃子が響き、祭りの雰囲気を伝えている=18日、同市