時評(7月23日)

米国で新型コロナウイルスの感染が新たに拡大する中、トランプ政権は秋の新学期再開に向け突っ走っている。「経済回復にとって不可欠」と見なしているためだ。 だが、校内の感染防止など安全対策は州や学校当局に丸投げで、トランプ大統領の一貫性なき指導力.....
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 米国で新型コロナウイルスの感染が新たに拡大する中、トランプ政権は秋の新学期再開に向け突っ走っている。「経済回復にとって不可欠」と見なしているためだ。[br] だが、校内の感染防止など安全対策は州や学校当局に丸投げで、トランプ大統領の一貫性なき指導力が露呈。政権は子供たちの安全を最優先にした学校再開を目指すべきだ。[br] 米政府は3月、国家非常事態を宣言。翌月、経済再開に向けた3段階の指針を公表し、専門家の警告を振り切り、外出自粛などで悪化した経済の復活に向けかじを切った。[br] 背景には、再選のため好調な経済を取り戻すという大統領の強い政治的な思惑がある。各州は大統領の圧力を受けて規制緩和に踏み切り、一時は全州が何らかの形で規制を解除した。[br] しかし、6月に入ると感染は徐々に拡大。特にフロリダ、テキサス、アリゾナなど南部諸州で広がり、フロリダ州では5月と比べ、感染者が約15倍に上昇した。現在は、感染者約380万人、死者14万人を超え、一日の感染者が平均約6万人に達する惨状になった。[br] 大統領は感染者の急増について「検査を増やしているため」と弁明、検査を抑えるよう指示まで出した。マスクの着用にも最近まで強く抵抗した。[br] 看過できないのは大統領が専門家の意見を無視、安全策を講じないまま学校再開を強行しようとし、米疾病対策センター(CDC)が作成した再開のための指針を「厳し過ぎる」として差し戻したことだ。[br] しかも、安全策は州知事や学校当局者に押し付けた上、「再開しなければ予算を停止する」とどう喝した。学校の現場は混乱に陥り、「週2日の登校」「すべて自宅学習」「オンライン授業」など対応はまちまちだ。[br] もう一つ浮き彫りになったのは大統領の科学や科学者軽視の姿勢だろう。「感染者の99%の症例は無害」と言い切り、7月に入っても「時期が来ればウイルスは消えると思う」など根拠のない発言を繰り返している。[br] その上、側近らは政権に耳の痛い意見を述べる感染症の権威、ファウチ国立アレルギー感染症研究所長を蚊帳の外に置き、メディアに露出させないよう妨害した。[br] 米紙によると、国民の63%は大統領の「ウイルス対策より経済優先」という姿勢に反対だ。[br] 「政府のコロナ対応は地図なき道を行っているようなもの」という専門家の批判を大統領は真剣に受け止めるべきだ。