天鐘(7月21日)

「迷いながらの一球だった」と述懐する時は、大概が負け試合だ。野球なら次もあるが、明日から始まる政府の観光支援事業「Go To トラベル」はそうはいかない▼先週の参院予算委は時期尚早の嵐が吹き荒れた。東大の児玉龍彦名誉教授は「国民が総力で感染.....
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 「迷いながらの一球だった」と述懐する時は、大概が負け試合だ。野球なら次もあるが、明日から始まる政府の観光支援事業「Go To トラベル」はそうはいかない▼先週の参院予算委は時期尚早の嵐が吹き荒れた。東大の児玉龍彦名誉教授は「国民が総力で感染を止めないと来月は目を覆うことに―」、東京都医師会の尾崎治夫会長も“Not Go To”と異を唱えた▼頼みの新型コロナ対策分科会の尾身茂座長さえ「やる時期ではない」と計画の見直しに言及。専門家の意見を聞いて判断するはずの政府は同夜、意表を突いた“東京外し”で逆風を抑え込み、事業の実施を決めた▼専門家の異論反論にどんな対案をぶつけて「Go」を導いたのか。菅義偉官房長官が感染拡大は“東京問題”と売った喧嘩(けんか)を、小池百合子都知事は支援事業は「冷房と暖房の両方かけるようなもの」と買った▼この舌戦を安倍首相は「どっちもやり過ぎ」と眺めていたが、“東京外し”で菅氏に軍配を上げた。専門家達は第1波を乗り切った「緩み」と指摘する。ウイルスがこんな遺恨を斟酌(しんしゃく)し、許してくれるはずもない▼移動制限の解除から1カ月。感染者は10倍に激増し、重症化の兆しだ。どう見ても二律背反過ぎ、全国知事会も柔軟な見直しを求める。首相は迷った揚げ句なら応変に修正、躊躇(ちゅうちょ)のない一球なら堂々と説明し、責任を明らかにすべきだ。