時評(7月21日)

政府は全国一斉の予定だった観光支援事業「Go To トラベル」を、東京都発着の旅行を除外して22日から開始すると決めた。都が新型コロナウイルス感染症への警戒度を最高レベルに引き上げ、感染者数も最近、過去最多を記録しており、安倍晋三首相は「現.....
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 政府は全国一斉の予定だった観光支援事業「Go To トラベル」を、東京都発着の旅行を除外して22日から開始すると決めた。都が新型コロナウイルス感染症への警戒度を最高レベルに引き上げ、感染者数も最近、過去最多を記録しており、安倍晋三首相は「現下の感染状況を踏まえて判断した」と述べた。しかし、首都圏や関西圏でも感染者は増加しており、決定の是非が今後問われる。[br] 同事業は感染症で打撃を受けた業種を支援する「Go To キャンペーン」の一環。国内宿泊、日帰りツアー費用の5割を国が支援するもので、関連予算は約1兆3500億円。4月初めの閣議決定では「収束後の一定期間に限定して実施」と明記されていた。[br] しかし、感染症の現状は全国的にも「収束」とはとても言えない。共同通信社の世論調査では、トラベル事業に関し「全面延期すべきだった」が62・7%に上っており、国民が感染拡大の不安を抱いていることを裏付けた。国会の閉会中審査でも野党側が事業の先送りを相次いで要求したほか、自民、公明両党の会合では除外の判断基準を示すよう注文が付いた。[br] 客の減少で経営が厳しさを増している観光業界の事情は理解できる。しかし、政府は人命に関わる感染防止策と経済社会活動の両立という基本方針を掲げており、今度の決定が経済を優先し過ぎていると言われても仕方がないのではないか。[br] 都内の感染者増を巡っては、菅義偉官房長官が「東京問題」と述べたのに対し、小池百合子都知事が政府の経済活性化策との整合性を挙げ「むしろ国の問題だ」と反発した。その対立を背景に、小池氏が都民に対し他県への移動自粛を要請したのを政府が逆手に取った側面もうかがえる。[br] そもそも、トラベル事業は当初8月実施だったのを、政治主導で今月の4連休前に前倒しされた経緯がある。その間、各地の自治体からは「(事業で)感染が拡大すれば人災以外の何物でもない」(宮下宗一郎むつ市長)などと苦言が呈され、各都道府県に観光対策を任せるよう求める声も多かった。[br] 政府がそれを押し切ったのは、一律10万円給付を巡って方針を変更、迷走したのと無関係ではないかもしれない。同様な混乱と政権への悪影響を避けるため、事業の大幅見直しをせず東京だけを対象外にしたとも受け止められるのだ。ただ国が地域分断をあおる結果になりかねず、懸念と課題を残した。