時評(7月17日)

外国からの観光客増加を当て込んで開業が予定されていたホテル建設の延期や中止が相次いでいる。新型コロナウイルス感染拡大でインバウンド(訪日外国人客)が見込めなくなったためで、政府は観光立国の戦略見直しを迫られている。 北陸新幹線の金沢までの開.....
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 外国からの観光客増加を当て込んで開業が予定されていたホテル建設の延期や中止が相次いでいる。新型コロナウイルス感染拡大でインバウンド(訪日外国人客)が見込めなくなったためで、政府は観光立国の戦略見直しを迫られている。[br] 北陸新幹線の金沢までの開業を機にホテル建設ラッシュとなっていた石川県金沢市では、感染拡大で不透明感が高まり建設延期や中止が目立つ。[br] 栃木県宇都宮市でも、JR宇都宮駅東口開発の核となるタイの高級ホテルの開業が2022年8月に予定されていたが、コロナ禍で着工の見通しが立たなくなっている。こうした状況は愛知県や福岡市など各地で起きており、ホテルだけでなく、航空、鉄道、観光バスから土産物まで観光産業全体に大きな打撃を与えている。[br] 政府は20年の訪日外国人客の目標を4千万人としているが、3月から激減し、6月はわずか2600人。コロナ禍の終息の見通しが立たない現状ではこの目標は「絵に描いた餅」でしかなく、早急に打開策を考えるべきだ。インバウンドが見込めない以上は、国内旅行客に観光地に来てもらってしのぐしかない。[br] そのためには、団体旅行ではなく、個人か小人数の旅行に合った「あなただけのメニュー」プランを作るべきだ。そうすれば、いわゆる「3密」も回避できる。日本には温泉など行きたくなるような観光資源が多くあるため、行ってみて再度訪問したくなるような提案ができるかどうかがポイントになる。[br] 「働き方改革」により長い休暇が取れるようになってきたため、2泊3日などの短期旅行ではなく、最低でも1週間の滞在型旅行を志向してみてはどうか。いくつかの観光スポットを周遊するなどすれば、旅行者1人当たりの消費する金額も増やすことができ、質の高い旅行になるのではないか。[br] 観光産業は裾野が広く雇用者数も多い。インバウンドに依存しない、安定収入が見込める新しいスタイルを確立する必要がある。[br] この中で国土交通省は、旅行需要を喚起するため7月22日から旅行代金を補助するキャンペーン「Go To トラベル」を行うと発表。しかし、全国的に感染者が増加している中で、1兆円を超す予算を組んでまで旅行促進策を実施することに、地方の知事や市長から疑問の声が上がった。夏休みシーズンを逃したくない気持ちは分かるが、政府は国民の生命、健康を守ることをまず優先すべきだ。