時評(7月12日)

高校球児の夏がいよいよ青森県内で幕を開ける。新型コロナウイルスの影響で全地方大会、甲子園大会の中止を受けた、県高野連独自開催による代替大会。勝利の先に“聖地”への切符がない異例の形となるが、それでも、あらゆるスポーツの試合や大会の自粛が求め.....
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 高校球児の夏がいよいよ青森県内で幕を開ける。新型コロナウイルスの影響で全地方大会、甲子園大会の中止を受けた、県高野連独自開催による代替大会。勝利の先に“聖地”への切符がない異例の形となるが、それでも、あらゆるスポーツの試合や大会の自粛が求められたここ数カ月を振り返れば、代替大会の実現すら感慨深い。[br] 例年であれば、高校球児は春休みを利用して各地に遠征し、練習試合などを通じて実戦感覚を取り戻す。新入生を迎える4月以降は春の地区大会、地区予選、県大会、東北大会で一冬の鍛錬の成果を確認した上で、夏の大会に臨む。[br] ただ、今年は国内でコロナ感染者が漸増した3月以降、県内の教育現場も断続的に休校が続き、学校再開後も運動部の活動は制限された。日本高野連はコロナ感染拡大防止を理由に5月20日に地方大会と甲子園大会の中止を決定。当時、甲子園出場の夢すら見られなくなった全国の球児、高校最後の夏に完全燃焼を誓っていた3年生の絶望感は計り知れない。[br] それでも、程なく各都道府県高体連が「3年生に試合の機会を与えたい」と、独自の“夏”を模索し、最終的に47都道府県すべてで代替大会開催が決定。今月1日には全国のトップを切って、コロナ感染者がゼロの岩手県で地区予選がスタートした。新学年になって公式試合に臨めないまま引退する可能性もあった最上級生は、安心したに違いない。[br] 14日開幕の青森県大会は各チームの長距離移動を避けるため、3回戦までは勝ち上がりを踏まえてカードごとに会場を設定するほか、全試合が原則無観客。運営面でもさまざまな感染防止対策が講じられる予定で、参加者すべてがしっかり守っていく必要があろう。[br] 今夏は球児を救済しようと、プロ野球の阪神球団などが全国の3年生球児に甲子園の土をプレゼント。青森県内でも、社会人チームの青森銀行野球部有志が県高野連と連携してクラウドファンディングで資金を募り、甲子園の土を購入した。土は青森県大会のメイン会場・ダイシンベースボールスタジアム(青森市営球場)の内野部分にまかれた。かつて甲子園を目指した“先輩”たちによる粋な計らいだと感じた。[br] 例年以上に多くの人の支えがあってプレーボールを迎える青森の特別な夏。球児たちは感謝の気持ちを胸に、これまで汗を流してきた仲間とともに、一投一打に全力を尽くしてほしい。