天鐘(7月9日)

新型コロナの影響で球場に観客を入れずに試合をしてきたプロ野球。明日から少しずつファンが戻ってくるが、振り返れば静寂の中のゲームもそれなりに楽しかった▼鋭い打球音やミットに収まるボールの音、選手たちの掛け声…。これまでは大歓声にかき消されてい.....
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 新型コロナの影響で球場に観客を入れずに試合をしてきたプロ野球。明日から少しずつファンが戻ってくるが、振り返れば静寂の中のゲームもそれなりに楽しかった▼鋭い打球音やミットに収まるボールの音、選手たちの掛け声…。これまでは大歓声にかき消されていた、さまざまな本来の「野球の音」がはっきりと耳に届いてきた。ふと、野原で遊んだ子供のころを思い出して懐かしくなった▼NHKラジオに『音の風景』という番組がある。全国各地で収録したいろいろな音を流すだけだが、それが人気で30年以上続く。過去には蕪島のウミネコや奥入瀬渓流のせせらぎなども取り上げられたことがある▼人間の営みや自然が生みだす音の数々。耳を澄ませばどこか優しく、心が和む。見知らぬ土地に思いをはせ、忘れていたふるさとの記憶が呼び覚まされる。思えば不思議な音の力である▼今、夕方になると八戸市の中心街から三社大祭のお囃子(はやし)が流れてくる。今年は山車の運行が中止になり、町内の山車組が毎日交代で奏でている。暮れゆく街を包む笛太鼓に「ふるさとの音」を実感する人は多かろう▼豪華さと技巧を競う山車に対し、お囃子はその変わらぬ音色で人の心を震わせてきた。集って祝えぬ300年の節目だが、伝統の調べは常に温かい。しばし浸りながら、いつもとは違う夏を過ごす。〈祭笛闇遠きより近きより 戸来澄子〉。