「種の保存」「販売促進」の両立に挑む 田子ニンニク「美六姫」デビュー2年目

美六姫の収穫初日を迎え、作柄を確かめる上平満広さん。「生産者の会」会長として、ブランド確立に期待を込める=6月25日、田子町
美六姫の収穫初日を迎え、作柄を確かめる上平満広さん。「生産者の会」会長として、ブランド確立に期待を込める=6月25日、田子町
田子町が開発したニンニクの独自品種「美六姫」が今年、市場デビュー2年目を迎える。ブランド力の強化に向け、町と生産者団体が販売戦略の策定を進める中、躍進の鍵を握るのが、ブランドを確立する上で重要な「種の保存」と「販売促進」の両立だ。苦労して開.....
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 田子町が開発したニンニクの独自品種「美六姫」が今年、市場デビュー2年目を迎える。ブランド力の強化に向け、町と生産者団体が販売戦略の策定を進める中、躍進の鍵を握るのが、ブランドを確立する上で重要な「種の保存」と「販売促進」の両立だ。苦労して開発した種の町外流出を阻止したい町側と、需要が高い旬の時期に販売したい生産者との間でそれぞれの思惑が交錯する。消費者の需要に応えながら町独自のブランドを育てられるか、官民一体の模索が続く。[br] 農林水産物の独自のブランド化を目指す際、必要不可欠なのが種の保存だ。[br] ニンニクは収穫した実のりん片を種として畑に植える。種用にニンニクを販売できるのは国から認可を受けた業者・団体だけで、美六姫の種は町が管理し、生産、販売を行っている。[br] 一方、食用として販売された実が種として流用され、町外で栽培される可能性も否定できない。このため町は昨年、保存性を高める1カ月間の乾燥のほかに、2カ月間、実を冷蔵して“冬眠”状態にし、意図的に種として栽培しにくいよう処理を施した。[br] ただ、冷蔵は9月末ごろまで時間を要するため、処理を施せば、ニンニクの需要が最も高まる夏場を過ぎてから店頭に並ぶことになる。[br] 美六姫生産者の会の上平満広会長(45)は「生産者はお盆もある8月に販売したいし、消費者も旬のニンニクを食べたい。8月に売ることができないなら、生産者が新品種を栽培する価値を見い出せないのではないか」と懸念を示す。[br] 町としては独自品種の流出防止が優先事項だが、生産者の心情を考慮したいという思いもある。町産業課1次産業戦略推進グループの白板大幸グループリーダーは「種の流出は心配だが、需要に対して商品を供給できなければ好機を逸する。ただ、流出防止と需要への供給の両立は簡単ではない」と頭を悩ます。[br] こうした中、一つの打開策として、町が商標登録している「美六姫」の名称の活用を挙げる。この名称を使えるのは、生産者の会に加入し、町が認めた生産者のみで、仮に他の人が実を発芽させて同じようなニンニクを生産しても「美六姫」と名乗って販売はできない。[br] ただ、このためには美六姫の名が「品質を保証するブランド」として認知されるよう、今後、知名度や品質を高めることが不可欠となる。[br] 町と生産者の会は半年前から販売戦略の策定に向けて協議を重ねており、近く生産者部会の全体会で決定する見込み。販売開始時期や販売体制などが盛り込まれる見通しで、今後、ブランド化を推進していく上で重要な指針となる。[br] 栽培方法を含め、ブランド確立へ向けた模索が続く中、白板グループリーダーは「ブランドは町だけで育てられるものではない。生産者と一体となり、産地をつくっていきたい」と力を込める。美六姫の収穫初日を迎え、作柄を確かめる上平満広さん。「生産者の会」会長として、ブランド確立に期待を込める=6月25日、田子町