過去に不適切な荒稼ぎがあっても、新ルールを決めた後、明確な根拠法律もなく罰を科すのは不当だ。最高裁判決を平たく言えば、こういうことだろう。[br] 総務省がふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した決定について市が違法だとして取り消しを求めた訴訟。最高裁は、国側勝訴の大阪高裁判決を破棄した上で、総務省の除外決定を取り消した。市側勝訴の逆転判決が確定した。[br] 法の抜け道を許した総務省が自らの失政を棚上げして、その責任を当の自治体に押しつけるのはおかしい。裁量権の逸脱を指摘された高市早苗総務相らはきちんとした総括を迫られる。[br] 森友学園などの疑惑が表面化するたびに、責任をあいまいにして逃げ切りを図ってきた安倍政権。今回はそれを司法がたしなめる結果になった。 ふるさと納税は昨年「返礼品は寄付額の30%以下の地場産品」などの基準を満たす自治体だけが指定を受けられる新制度へ移行。総務省は過去半年間に「趣旨に反する募集」をしなかったことも考慮すると告示した。[br] 最高裁での争点は二つだった。第一は、地場産ではない豪華な返礼品のほか高価なギフト券を贈るなどした市の行動が行政機関として逸脱しているとの理由で、総務省が除外したことの当否だ。判決は除外決定について、地方税法の条文からは総務省に「基準の設定を委任する授権の意思が明確に読み取れない」などと指摘した。[br] 第二は、総務省の裁量権だ。判決は総務省が募集の適正実施基準を定め、それを満たした自治体を指定した行為について「裁量の範囲を逸脱した違法なもの」で無効と判断した。[br] 過去の不適切な寄付を問題視するならば、それは精算で返還を求めるのが筋だろう。不利益を科すならば、行政の裁量ではなく、新たな法令で明確に定め、国民の理解の下で行われるべきだ。対立ではなく、協力で打開の道を探ってほしい。[br] 市が2018年度に集めた寄付金は全自治体総額の1割になる。判決は「社会通念上節度を欠いていた」と厳しく評価。市側の勝訴に「居心地の悪さ」を記した少数意見も見られる。[br] 東京都などでは高額納税者による外部への寄付の結果、税収が激減。しかし、これらの居住者は住んでいる自治体のサービスは受け続ける。確かに奇妙な構図ではある。[br] 政府は制度の功罪を検証し、根本から練り直さなければならない。最高裁が求めたのは政治と行政の見直しでもある。