天鐘(7月1日)

海中の砂泥に頭部らしきものが埋もれていた。肌は白く無機質で、生気がない。殺人事件?正体はマネキンだった。現場は水深6280メートルの日本海溝。潜航調査中の「しんかい6500」が1991年に撮影した▼海洋研究開発機構が「深海デブリデータベース.....
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 海中の砂泥に頭部らしきものが埋もれていた。肌は白く無機質で、生気がない。殺人事件?正体はマネキンだった。現場は水深6280メートルの日本海溝。潜航調査中の「しんかい6500」が1991年に撮影した▼海洋研究開発機構が「深海デブリデータベース」で公開している。30秒ほどの映像から存外の驚きが伝わる。深淵を漂うプラスチック類、タイヤ、一斗缶、スニーカー…。海洋汚染の実態を思い知らされる▼プラスチック製のレジ袋が有料化された。国は「3密回避」ならぬ「3R推進」を訴える。リデュース(廃棄物の発生抑制)リユース(再利用)リサイクル(再資源化)。ここでも求められる生活様式の見直し▼苦しむウミガメの鼻から出てきたのはストロー。飢え死にしたクジラの胃には大量のビニール袋。世界中が幾度も生態系の危機を目撃し、悲劇を繰り返すまいと誓うのに、ゴミは減らない▼日本は不名誉な“廃プラ大国”だ。1人当たりの排出量は米国に次いでワースト2位である。有料化は削減への第一歩。行動変容の必要性に異論はないが、レジ袋は全体の2%にすぎない。政策の本気度はいかに▼そして事は思慮のないポイ捨て、各人のモラルに行き着く。先日、テレビニュースを見てがく然とした。海岸の清掃奉仕に汗を流した小学生が笑顔で一言、「ゴミが多くて面白かった」。そんな社会でいいはずがない。