天鐘(6月20日)

庭で豚が大事な種芋を食べていた。農夫が「この野郎」と撃ち殺すと隣の農場の豚だった。1859年、今の米国ワシントン州北西部で起きた「豚戦争」の発端である▼米英間で続いた国境紛争の一コマ。賠償で揉(も)め、農夫が米国に支援を求めると四百数十人を.....
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 庭で豚が大事な種芋を食べていた。農夫が「この野郎」と撃ち殺すと隣の農場の豚だった。1859年、今の米国ワシントン州北西部で起きた「豚戦争」の発端である▼米英間で続いた国境紛争の一コマ。賠償で揉(も)め、農夫が米国に支援を求めると四百数十人を派兵。一方の英国は軍艦5隻で応じたが、幹部が「豚1匹で」と攻撃命令を拒否。この英断で犠牲は豚1匹で済んだ▼1969年、サッカーW杯予選で敗れたホンジュラスが、勝ったエルサルバドルを悔し紛れに空爆するという信じ難い戦争もあった。泥沼化した国境線問題もあったが、戦争はいつもひょんなことが引き金になる▼北朝鮮が南北融和のシンボル南北共同連絡事務所を爆破した。金正恩(キムジョンウン)委員長の妹、金与正(ヨジョン)党第1副部長は「脱北者のビラ散布」を口実にしているが、真相は韓国・文在寅(ムンジェイン)政権への鬱積(うっせき)した不満と不信のようだ▼新型コロナによる中国国境の封鎖で北の経済は地を這(は)い、未曾有の食糧不足に襲われているとか。「コロナ感染ゼロ」も眉唾だ。実態は逆で命懸けの“三重苦”に晒(さら)され、体制への不満が滲(にじ)み出ても不思議はない▼コロナに米中対立、米大統領選を控えて関係国は手一杯だ。“内憂”を隠していくら“外患”を叫んでみても傾ける耳は少ない。非武装地帯や黄海がきな臭く、解決の糸口は絡まるばかりだ。瀬戸際でのひょんなことは余りに危険過ぎる。