天鐘(6月13日)

「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は茶番として」とは独国の哲学者マルクスが自著で、先輩ヘーゲルの言葉を引用しながら述べた有名な教戒だ。人は往々にして喉元を過ぎれば熱さを忘れる▼世界で5千万人が死亡した史上最悪のパンデミック・スペイ.....
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 「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は茶番として」とは独国の哲学者マルクスが自著で、先輩ヘーゲルの言葉を引用しながら述べた有名な教戒だ。人は往々にして喉元を過ぎれば熱さを忘れる▼世界で5千万人が死亡した史上最悪のパンデミック・スペイン風邪から100余年。暴れまくっていた新型コロナは梅雨の気配にやっと落ち着きを見せているが、前例によるとウイルスは第2波が怖いらしい▼厳しい都市封鎖で臨んだ欧州は100万人当たりの死者数が軒並み500人超。一方、自粛で検査にも消極的だった日本は7・2人。専門家は遺伝子や生活習慣など諸説を挙げて首を捻(ひね)るが、ただの“幸運説”も▼例え彼らが嫌う夏は凌(しの)げても乾燥冷涼の秋冬がやって来る。スペイン風邪は1918年春の先触れでは穏和を装っていたが、秋の第2波で致死率を4倍の5・3%に変異させ、“殺人鬼”の本性を剝(む)き出した▼39万人が犠牲になった国内感染は「免疫のない新兵を冬にウイルス渦巻く兵営に入れた軍が点火剤に」(速水融(はやみあきら)『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』)との検証も▼企業の抗体検査で陽性率は0・4%ながら、経済は無防備なまま走り出した。“点火剤”はそこここに散在する。第2波は襲来するだろう。ワクチンがあれば別だが、幸運だけでは乗り切れない。第2波こそ本番。“茶番”では済まされない。