フジツボで漁師の安定収入に 青森県南地方で産学が養殖技術を研究

ミネフジツボの養殖技術を研究している(左から)松橋聡専門員、鶴見浩一郎特任教授、工藤淳也専務。手前は種苗を育てる水槽=4月、階上町
ミネフジツボの養殖技術を研究している(左から)松橋聡専門員、鶴見浩一郎特任教授、工藤淳也専務。手前は種苗を育てる水槽=4月、階上町
近年、高級珍味として人気が高まっている甲殻類のフジツボ。これを養殖し、地元漁師の収入増につなげようと、青森県南地方で産学が連携して、養殖技術の開発に取り組んでいる。現在、階上町の県栽培漁業振興協会の水槽で育てた種苗を三沢沖の海中につるして大.....
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 近年、高級珍味として人気が高まっている甲殻類のフジツボ。これを養殖し、地元漁師の収入増につなげようと、青森県南地方で産学が連携して、養殖技術の開発に取り組んでいる。現在、階上町の県栽培漁業振興協会の水槽で育てた種苗を三沢沖の海中につるして大きく育てるところまで進行。関係者は「スルメイカの不漁などで漁師は苦しい経営を強いられている。養殖が軌道に乗れば、安定収入にもつながる」と養殖技術の確立に向けて奮闘している。[br] 研究を進めているのは、同協会、八戸学院大、民間企業の東北総合研究社(八戸市)の3者。フジツボはエビやカニをさらに濃厚にしたようなうま味が特徴。2013年から、特に大きく成長し、味が良いとされるミネフジツボの種苗を、水槽の中の養殖プレートに付着させ、海中で育てる研究に取り組んでいる。[br] フジツボは固い殻に覆われているが生まれたばかりは殻を持たず、幼生として海中を浮遊。植物プランクトンを食べて栄養素を蓄え、別の幼生に変態する。2本の触角で移動しながら着生場所を決め、着生後に脱皮してフジツボとなる。[br] 養殖の研究は、同大などが開発して特許を取得した専用のプレートに、フジツボの種苗を付着させることに力を注いできた。 研究はトラブルの連続だった。スタートした13年から4年目までは餌が合わなないなど、種苗を海につるすまで生かせなかった。[br] さらに今年は幼生の餌となるプランクトンが培養できないというピンチに。そこで餌の低コスト化に取り組んでいる、同協会の松橋聡専門員が「餌の培養容器に幼生を入れて飼育しよう」と試みると、これが的中。幼生がプランクトンを食べ、その排せつ物を分解してプランクトンがさらに増えるという好循環が起こった。[br] プレートの開発にはホタテ養殖資材の製造・販売を行う同社が協力。フジツボ以外の海藻などが付着しないよう、シリコンを塗るなど特別な加工を施した。工藤淳也専務は「シリコンをどう塗るかが大きな課題。種苗が増えれば費用もかさむが、何とか工夫したい」と前向きだ。[br] 昨年、三沢沖につるした数百個のフジツボが現在、成長している。約3年で出荷可能な4センチほどに成長する予定で、順調に育てば22年には出荷可能だ。同協会の二木幸彦業務執行理事は「1年でも早く成功させて、漁業者を守る仕事にしたい」と意気込む。[br] フジツボ養殖のメリットは、技術が確立すれば、特別なノウハウがなくても漁師が本業の傍らでできることだという。同大の鶴見浩一郎特任教授は「定期的に様子を見るだけで、海につるした後は、餌やりは不要。いずれは青森の名産品として観光業にも貢献できるだろう」と期待を込めた。ミネフジツボの養殖技術を研究している(左から)松橋聡専門員、鶴見浩一郎特任教授、工藤淳也専務。手前は種苗を育てる水槽=4月、階上町