新型コロナウイルス感染拡大による日本経済への打撃が、マクロ経済指標で色濃く示された。内閣府が発表した2020年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率3・4%の減で、消費税率引き上げの影響で落ち込んだ19年10~12月期に続き、2四半期連続のマイナス成長となった。[br] 政府が2月下旬に外出や大規模イベントの自粛要請を行ったことを受けて個人消費が前期比0・7%減少。設備投資も同0・5%減など内需全体が同0・7%減と大きく落ち込んだ。また主要国が感染防止対策を講じ経済停滞が生じたことを反映し、輸出も同6・0%減少した。[br] 政府は47都道府県に発令していた「緊急事態宣言」について、39県の解除を決めたが、既に深刻化している経済への打撃の修復には時間を要する。4~6月期の成長率はマイナス幅が拡大することは避けられず、マイナス20%前後の成長率へと落ち込みを予想する専門家が多い。[br] 日本経済は消費税率引き上げ後の低迷から徐々に回復すると、増税前に描いた政府のシナリオは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要激減によって完全に崩れた。[br] 政府は緊急経済対策として25兆円超の20年度の補正予算を執行し個人や企業への支援策を講じているが、安倍晋三首相は追加の経済対策を盛り込んだ第2次補正予算の編成を指示した。[br] 対策は一過性では不十分なことは明らかだ。[br] 事業者への「持続化給付金」や国民一律の10万円支給などの措置、中小テナントへの家賃補助、困窮学生支援、自治体向け交付金などの対策は状況に対応して繰り返して実施すべき政策だ。だがこれらの対策は雇用や生活の崩壊という「景気の底割れ」を防ぐ緊急避難措置で、対症療法にすぎない。[br] 感染の終息に向けた闘いは長期化が避けられない。政府が提唱する「新しい生活様式」を踏まえた、長期的な視点での経済再生図を描いていくことが必要だ。[br] 企業活動ではIT化の促進、テレワークやシフト操業、生産・供給・調達体制の多様化など従来型の企業活動からの転換が検討されるべきだ。また「3密」を意識した消費行動という価値観の変化も家計部門には求められる。[br] 新型コロナウイルスとの闘いは、新しい生活様式を踏まえて社会経済構造を改革していくチャンスともいえる。従来の発想にとらわれない柔軟な対応で、日本経済の再生を目指したい。