天鐘(5月16日)

「ジャパン・ブルー」とも称される藍染め。その文化は江戸から明治にかけて花開く。木綿が量産化された時代。着物、野良着、のれん、のぼり、布団、手ぬぐい…。庶民の生活を彩った▼その色合いから、藍染めの店は「紺屋(こうや)」と呼ばれた。後に染め物屋.....
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 「ジャパン・ブルー」とも称される藍染め。その文化は江戸から明治にかけて花開く。木綿が量産化された時代。着物、野良着、のれん、のぼり、布団、手ぬぐい…。庶民の生活を彩った▼その色合いから、藍染めの店は「紺屋(こうや)」と呼ばれた。後に染め物屋の総称となる。暮らしに欠かせない存在として、全国各地に根を下ろした。古い街を歩けば「紺屋町」という地名に出会う▼〈青は藍より出でて藍よりも青し〉。教えを受けた弟子が、教えた師匠より優れていることの例えである。未曽有の原発事故から9年。教訓を踏まえて厳格化された原子力施設の規制は、世界最高水準とされる▼使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の安全審査は6年4カ月にも及んだ。結果は「合格」だが、最低限の条件をクリアしたにすぎない。かねて指摘されたのは安全文化の欠如である。一朝一夕では醸成されまい▼工場と原発をつないで核燃料を再利用するサイクルは、綻(ほころ)びが目につく。事故後に再び動き出した国策の現状は、いわば惰性に近い。事業に伴って発生する「核のごみ」の行き場もない。県外搬出の確約はあるが、処分地選定は遅々として進まない▼〈紺屋の明後日〉。染めは手作業で、天候にも左右される。納品の遅れが常態化し、催促されると「明後日にでも…」。その場しのぎの言い訳を繰り返した。約束は当てにならない―と諺(ことわざ)は説くが。