政府は新型コロナウイルスの緊急事態宣言について、全国47都道府県のうち、重点的な対策が必要な13の「特定警戒都道府県」の一部を除く39府県の解除を検討している。安倍晋三首相が14日に専門家の意見を踏まえ、最終判断する。[br] 感染防止と社会経済活動の維持をいかに両立させるのか。国民の命と暮らしを同時に守る「出口戦略」を描くのは政治にしか果たせない役割だ。[br] 安倍首相には科学的根拠に基づく明確で分かりやすい解除の基準を明らかにし、国民に説明する責任がある。[br] 感染が再燃した場合に宣言を再発令する基準もあらかじめ明示し、国民の理解と協力を得やすくしておくべきだ。[br] 宣言の一部解除に当たっては、感染再拡大という第2波に備え、PCR検査や医療の体制を拡充し、医療崩壊を防ぐ取り組みが何よりも肝要だ。[br] 感染の広がりは、地域によって大きな差がある。休業要請の緩和については、新型コロナウイルス特別措置法に基づき、知事が地域の実情に応じて判断する権限を持つ。[br] 大阪府の吉村洋文知事は、感染経路不明の感染者数、陽性率、重症者用病床使用率の三つの数値で構成する「大阪モデル」と呼ばれる独自基準を発表した。他の都道府県も基準を策定するか、策定の準備を進めている。[br] ただ地域にばらつきが出れば戸惑うのは国民と事業者。政府が分かりやすい基準を示し、自治体の判断を支えてほしい。[br] 海外ではドイツなど営業規制や外出制限を段階的に解除、緩和した国が相次いでいる。ただ韓国ではクラブでの集団感染が発生するなど先行した国で感染が再拡大する兆しがある。日本でも一部解除による「緩み」の全国波及を警戒すべきだ。[br] 大都市部では当面、休業要請が続き、国民と事業者の疲労と負担の増幅は避けられない見通しだ。補償の拡充や雇用調整助成金の増額、中小企業への家賃補助、困窮した学生への支援など追加の緊急経済対策を迅速にまとめる必要がある。[br] 今国会は会期末まで1カ月余りを残すのみとなった。政府与党は2020年度第2次補正予算案の編成を急ぎ、与野党が早期成立に協力すべきだろう。[br] 治療薬とワクチンが開発されるまで人と人との接触を極力削減し、ウイルスとの共存を図っていく以外に選択肢はない。[br] 政府の施策の前提となる国民の理解と協力は、政治への信頼がなければ得られないことを安倍首相は肝に銘じるべきだ。