一日も早く平穏な日常を取り戻せますように―。新型コロナウイルスの感染拡大により、不安が募る中、子どもたちの切なる願いは、折り紙で折られた358匹の亀に託された。“三五八願亀(みごやがんかめ)”と名付けられた折り紙を作ったのは、本年度で閉校する階上町立小舟渡小学校(三谷公人校長)の児童24名と教員、保護者たち。同校最後の6年生2人が制作を呼び掛け、学校一丸となって完成にこぎつけた。[br] 同学校は、本年度で118年の歴史に幕を閉じる。最後の1年間、子どもたちにたくさんの思い出を作ってあげたい―と、教員だけでなく、地域でさまざまな行事を計画していた。しかし、新型コロナの影響で、行事はことごとく中止に。3月には、子どもたちが登校することすらできなくなった。[br] そんな中、6年生の重文字佑生(ゆう)君(11)が三谷校長宛に一通の手紙を送った。そこには、行事ができなくなった悲しさや、学校に通えない寂しさと共に、一日も早く平穏な日々が戻ってほしいと切実な思いがつづられていた。[br] この祈りを何かの形にできないか。三谷校長と重文字君、そしてもう1人の6年生の金澤幸音(ゆきと)君(11)が話し合い、千羽鶴に着想を得て、折り紙の亀を折ることに決めた。[br] 亀を選んだのは、「喜(き)」と音や形が似ているから。亀を重ねることで、喜びが重なっていくようにとの思いを込めた。さらに願いがかなうように縁起が良いとされる数字の「358」匹折り、重ねることも考案。6年生2人からの提案に、ほかの児童や保護者も賛同し、「三五八願亀」作りが始まった。[br] 亀の甲羅には、思い思いの応援メッセージを書いた。「コロナにかつぞ!」「みんなでがんばろう」。できあがった亀の折り紙は1800匹以上になり、4月上旬に五つの「三五八願亀」が完成した。[br] 製作を始めた当初は、自分たちと同じく、楽しみにしていた行事や大会が中止になった、東北地方の小中学校や高校に贈る予定だったが、3月下旬に青森県内でも感染者が確認されたことなどから、医療従事者や公務員など新型コロナに対応する関係者への応援の意味を込めて国や地元自治体に贈呈することを決めた。[br] 4月下旬、子どもたちの思いのこもった「三五八願亀」が、同町の浜谷豊美町長に手渡された。浜谷町長は「一生懸命折っている姿が目に浮かぶようだ。皆さんの願いが届くように頑張る」とお礼を述べた。[br] 町長に手渡した金澤君は「みんなに願いが届いてほしい。これからも学校を引っ張っていきたい」と意気込みを示し、重文字君も「甲羅にみんなが元気になるようなメッセージを書いた。最高学年として、一日一日を大切にしていきたい」と力強く語った。