緊急事態宣言の5月末までの延長で、外出や営業の自粛は続く。宣言から1カ月、百貨店や航空、ホテル、観光、飲食などは売上高が激減、中小企業の倒産や工場休止が急増した。自粛継続で空前の危機に直面するのは必至だ。今月が日本経済の正念場になるだろう。[br] 政府は延長の一方で、感染が限定的な34県で自粛緩和を容認。さらに14日をめどに全国的な状況を分析、宣言の早期解除を探る。しかしPCR検査体制が整わずに接触制限が緩めば、感染リスクが高まり、かえって経済の正常化は遅れかねない。焦りは禁物だ。[br] 経済活動を早期再開するには、企業や家計への大胆な資金支援をてこに、営業や外出の制限を徹底し感染を抑制することだ。海外にその成功例があるのに、日本は強制力がないなどを理由に、自粛要請も支援も小出しを続け、感染が期待ほど抑制されていない現状となっている。[br] 実施を検討中の事業者への家賃支援、雇用を守る企業向けの雇用調整助成金上積みも、徹底支援の覚悟があれば当初から実施できた。対応遅れや突然の給付金変更などのドタバタは、初動段階での危機認識の甘さが尾を引いているためではないか。[br] 今後感染数が着実に減少し宣言解除となっても、経済が平時に戻るには1年以上の長丁場となろう。世界的には今年後半から回復軌道に入るとの予測もあるが、全ては感染の動向次第。悪化と回復を繰り返すW字形や徐々に回復に向かうU字形の予想が多い。政府がこだわる終息後のV字回復は、到底無理だ。[br] 出口が見えない企業活動の不透明感から、航空会社など大企業が数千億円規模で追加融資枠を金融機関に要請する動きが出ている。政府は近く、業態ごとの活動開始のガイドラインを示す方針だが、信頼に足る出口戦略を練ってほしい。[br] 対策内容の吟味や財源論も課題だ。一律10万円に変更した給付金は、返上を表明した国会議員など高額所得者もいる。追加給付の検討の際には所得制限など支給基準はやはり必要だ。都内の一部にしか届いていない政府主導のマスクは無駄の最たるもの。潔く中止できないか。[br] 対策は国債発行で賄われ、100兆円超の本年度予算は5割以上が借金頼みとなる。日銀は市場の不安抑制のため国債の無制限購入を決めたが、原資は国民の預金だ。東日本大震災時には、時限の復興税で対応した。今回も支援策だけでなく、財源の問題点も国民に明示する責任がある。