天鐘(5月9日)

家族に「つまり」と「要するに」を使わないよう釘(くぎ)を刺された。つまり―で始まれば一段高いところからの説教に聞こえると。会話は同じ目線でないと弾まないということらしい▼「まさに」「…の中に於(お)いて(ですね)」「つまり」「そもそも」「し.....
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 家族に「つまり」と「要するに」を使わないよう釘(くぎ)を刺された。つまり―で始まれば一段高いところからの説教に聞こえると。会話は同じ目線でないと弾まないということらしい▼「まさに」「…の中に於(お)いて(ですね)」「つまり」「そもそも」「しっかりと」。安倍首相が昨年の国会答弁で多用した“不快ワード”(日刊ゲンダイ)だという▼なくても済む副詞や接続詞の数々だ。強調のつもりだろうが泡のように軽く“話の接ぎ穂”としか思えない。「あー」で熟考、「うー」で推考したという“あーうー宰相”こと大平正芳元首相の実直さが懐かしい▼不快ワード上位の使用頻度は昨年だけでそれぞれ300回前後に上ったとか。驚いたのはこれら常套句を圧倒して420回も使われた答弁がある。“モリカケや桜を見る会”の答弁「お答えは差し控える」だ▼最近耳にするのは「躊躇(ちゅうちょ)なく」。新型コロナウイルス対策にぴったりでお気に入りのフレーズらしい。『論語』の「過(あやま)ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」が思い浮かぶ。失敗に気付いたら躊躇なく改めよの意味である▼だが言うは易(やす)く行うは難しだ。一国の宰相が躊躇なく約束したPCR検査も目標から程遠い。独国のメルケル首相は平易な言葉で心を伝えようとしたから国民の心を打った。美辞麗句より日頃の姿勢と本気度なのだろう。紡いだ言葉の裏側も見透かされているから怖い。