時評(5月8日)

政府は、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を5月末まで延長することを決めた。感染者が多い東京都など「特定警戒」の13都道府県についてはこれまで通りの規制を続ける一方、感染が一定程度抑えられているそれ以外の34県については、外出自粛や休業.....
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 政府は、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を5月末まで延長することを決めた。感染者が多い東京都など「特定警戒」の13都道府県についてはこれまで通りの規制を続ける一方、感染が一定程度抑えられているそれ以外の34県については、外出自粛や休業などの要請を条件付きで緩和する。社会経済活動への影響に配慮したものだ。[br] 併せて政府の専門家会議は、感染拡大防止のための「新しい生活様式」の実践例を示した。人との接触を極力避けるための日常生活の基本や、テレワークなどを活用した働き方を具体的に示し、密集、密接、密閉の「3密」を避けるよう求めた。[br] 日常生活、仕事のスタイルの変革を進めながら規制を徐々に緩和していこうとの考えだが、感染予防と経済活動の両立ができるか、大型連休が終わったこれからが正念場になる。5月末までにウイルスの感染拡大を抑え込み、経済活動の本格的再開につなげられるかは、個々人の生活様式にかかっている。[br] 自粛・休業要請の延長に当たっての大きな課題が、要請に応じた企業・店舗などに対する補償だ。安倍晋三首相は緊急事態の延長に当たって、追加の対策を検討することを表明したが補償問題が焦点になる。中小・零細業者の経営や雇用を守るためにも金銭的な支援は必要だ。手元資金が少ない人たちへの支援を手厚くしなければ、格差を広げ、日本経済の活力をそぐことにもなりかねない。[br] 政府に頼るだけでは限界がある。民間の業種を越えた幅広い協力、支援で危機を乗り越えねばならない。雇用面でみると、飲食や観光などの業種は外出制限のあおりで余剰人員を抱える一方、スーパーや宅配業者は人手が足りない。労働力が柔軟かつスピーディーに補完できる社会システムが求められる。[br] 一方、営業自粛で売り上げがなくなった飲食店や旅館、文化施設などでは、不特定多数の人からインターネットで資金を募るクラウドファンディング活用の動きが広がっている。支援に応じれば、食事券や宿泊券が送られてくる仕組みだ。全国の小規模映画館を支える基金のように当面の目標額1億円を57時間で達成した事例もある。[br] 感染症の克服には個々人の意識改革と相互扶助の精神が求められる。全国の新規感染者はやや減少傾向にあるが、感染拡大第2波を懸念する声も多い。事態の終息には個々人が常に危機感を持ち続けるしかない。緊急事態宣言が出されている5月は大きなヤマ場だ。