時評(5月5日)

新型コロナウイルス関連の企業倒産が急増している。民間信用調査会社の東京商工リサーチの4月30日までの集計で、新型コロナ関連の経営破綻が109件に達した。2月はわずか2件、3月は23件だったが、4月は84件。宿泊や飲食などサービス、小売業が中.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 新型コロナウイルス関連の企業倒産が急増している。民間信用調査会社の東京商工リサーチの4月30日までの集計で、新型コロナ関連の経営破綻が109件に達した。2月はわずか2件、3月は23件だったが、4月は84件。宿泊や飲食などサービス、小売業が中心だが、業種は広がりを見せている。[br] 事例をみると、3月6日には京都市内でインバウンド向けに着物レンタルショップを展開してきた呉服業者の京洛和蒼が観光客の激減で1億5千万円の負債を抱えて倒産した。4月24日には東京、大阪などの大都市と羽田、関西空港などのカプセルホテルで急成長を遂げてきたファーストキャビンが破産手続きを申請。27日には、北海道や大阪などでホテルを展開するWBFホテル&リゾーツが約160億円という多額の負債を抱えて、大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。[br] この3社は今回のコロナ不況の直撃を受けた形で、こうした宿泊、観光関連の経営破綻は今後さらに増えそうだ。[br] コロナ禍の影響が長期化した場合に懸念されているのが、仕事をやめて店を畳む廃業が増えるのではないかという点だ。商工リサーチによると、2019年に全国で休廃業、解散した企業は4万3348件と前年比較で7・2%減ってはいるが、16年以降は年間4万件を超える高い水準が続いている。[br] その要因は後継者がおらず、人手不足で、仕事があっても回していけないなどで、業種は建設が最も多く、次いで小売り、卸。商工リサーチの友田信男常務は「新型コロナのダメージが、休廃業予備軍の背中を押すことになるのではないか」とみている。[br] 中小企業は日本経済を下支えしてきたが、今回のコロナ禍ではかつてない打撃を受けそうだ。破綻する企業の中には生産性が低いため倒産してもやむを得ない企業もあるが、何とか生き残ってほしい企業も多くある。[br] その中にはモノづくりの匠(たくみ)の技術、後世に技術を伝承してほしい伝統工芸技術がある。また情報技術(IT)など先端技術を生かした将来有望な企業もある。こうした企業は誕生して間がないため資金力が乏しく、倒産に追い込まれると、せっかくのフロンティア精神がそがれてしまう。[br] そうなると優秀な若い人材も離職して、日本経済にとって大きなマイナスとなる。中小企業の支援策は、将来の「金の卵」や貴重な匠の技術をつぶさないよう細かな配慮が求められる。