天鐘(4月26日)

以前にも紹介したことがあるが、毎年この時期になると元NHKのアナウンサー松平定知さんの失敗談を思い出す。入局間もないころ、担当した天気予報でやらかしてしまった▼当時の原稿は天気をカタカナ一文字で表した。雨は「ア」、曇りなら「ク」。初めは戸惑.....
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 以前にも紹介したことがあるが、毎年この時期になると元NHKのアナウンサー松平定知さんの失敗談を思い出す。入局間もないころ、担当した天気予報でやらかしてしまった▼当時の原稿は天気をカタカナ一文字で表した。雨は「ア」、曇りなら「ク」。初めは戸惑ったが、慣れれば簡単だ。次第に下読みをしなくなる。ある日、渡された原稿を本番直前に見て驚いた。「ニ」▼初めての記号である。もう周りに聞く時間はない。懸命に考えて浮かんだのは「虹」。「今夜は虹がでるでしょう」。かくも珍妙なる天気予報。もちろん正解は「にわか雨」である。(自著『アナウンサーの日本語論』)▼この春、新社会人となった新人君たちも職場に出てそろそろ一カ月。もう仕事には慣れたか、まだ緊張が解けないか。もしかしたら既にやらかしてしまい、どっと落ち込んだ、という人もいるかもしれない▼車の運転でも慣れたころが一番危ないという。油断は禁物、慎重に―である。とはいえ、エネルギーにあふれる新戦力。小さく縮こまっての安全運転ばかりもつまらない。時には若さで踏み込むアクセルだって必要だ▼どの世界でもミスはつきものである。歌の歌詞ではないけれど、誰でも最初は初心者だ。ちなみに上司に呼ばれた松平さん。言われた言葉は「君の天気予報には夢があるなあ。俺も一度、夜の虹をみてみたい」。さあ頑張ろう。