天鐘(4月17日)

右、中央、そして左へ。官邸で記者会見に臨む首相は、周囲を見渡すように首を振る。用意したスピーチには淀(よど)みがない。コロナ禍に「戦後最大の危機」と言葉も強い。それなのにメッセージが心に響かない▼演台の左右にはプロンプターと呼ばれる透明板。.....
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 右、中央、そして左へ。官邸で記者会見に臨む首相は、周囲を見渡すように首を振る。用意したスピーチには淀(よど)みがない。コロナ禍に「戦後最大の危機」と言葉も強い。それなのにメッセージが心に響かない▼演台の左右にはプロンプターと呼ばれる透明板。映画の字幕のように、読み上げる原稿が映し出される。正しい情報を伝えるために有益ではあるが。訴えが共鳴を呼ぶ諸外国のリーダーとは様相が異なる▼緊急事態宣言が全国に発せられた。感染者数は拡大の一途。多くの事例で経路を追えなくなった。現状に歯止めが掛からず医療崩壊を招けば「命の選別」を余儀なくされる。最悪の事態を回避したい意図は分かる▼首相が語った長期戦。先が見えないマラソンに挑む覚悟は決めたつもりだ。しかし、見せつけられたのは行動制限に関する綱引き、現金給付を巡る混迷…。政府の対応にペースを乱され、遠いゴールを前に息切れしてしまう▼躊躇(ちゅうちょ)と即断が行き来するから、政策決定の振り幅が大きい。冷静さを失っているようにも見える。不安の元凶は見えないウイルスだけでない。いま求めたいのは、前を向く力を国民に与えるメッセージである▼きょうからでもいい。何度でもいい。正面を見据え、内から出る言葉で、国民に語りかけてほしい。連帯を生み、国難を乗り越えられるか。在職が憲政史上最長を誇る首相の胆力が試される。