新型コロナウイルスの流行が深刻化している。国内では増え続ける患者を収容しきれずに医療が崩壊する危機も迫る。4月は世界と日本の命運がかかる。欧米の大流行は山を越えるか、日本は感染爆発を回避できるか、岐路に立つ。[br] 日本はクラスター(感染者集団)連鎖を断つことで、欧米のような感染爆発を防いできた。しかし3月中旬以降、欧米からの帰国者と年度替わりの歓送迎会が重なって、第2波のまん延期に入った。経路不明の感染者が半数を超え、流行の波は地方にも及んでいる。[br] 安倍晋三首相は緊急事態宣言で人の接触を「最低7割、極力8割」減らすよう訴えた。この政策は西浦博北海道大教授が「接触を8割減らせば感染者は1カ月で減少する」とした数理モデルを基にした。信頼できる予想だ。リスクを直視し、自粛で目標を達成したい。[br] 今最も感染が危険なのは夜の繁華街と医療機関といえる。バーやカラオケなどは休業できても、病院の閉鎖は難しい。各地で院内感染が相次いでいる。病院が機能しなければ救急医療などの日常診療も危うい。医療現場では際どい綱渡りが続く。[br] 新型コロナは感染症法で2類感染症の扱いを受け、患者全員の入院隔離が原則となる。厚生労働省は4月初め、この規定を緩め、8割を占める軽症者が自宅やホテルなどで療養できるようにした。病院外での療養と健康チェックは医療崩壊を防ぐためにやむを得ない。[br] 各国のデータが示すように医療が崩壊すれば致死率は上がる。現場は救命に全力を挙げてほしい。重症者の治療に集中するには、症状が改善した患者の早期退院や、一般病院の新型コロナ診療引き受けも必要だろう。厚労省が解禁したオンライン診療も活用したい。[br] まん延期に入ったのに、検査態勢が今も不十分なままなのは日本の弱点だ。特に東京や大阪では検査数が少な過ぎて感染拡大に追い付いていない。実態を正しく捉えなければ適切な対策もできない。外国で実施されたドライブスルー方式の検査は導入に値する。[br] 感染を防ぐ医療用のマスクや防護具が現場で不足している。これでは院内感染を防ぎきれない。重篤者を治療する集中治療室(ICU)や人工呼吸器、救命の最後の手段となる人工心肺装置(ECMO)などの整備も急ぎ、重症者治療を担う医療の負担を減らすべきだ。かつてない医療危機の中で奮闘するスタッフを物心両面で支援したい。