時評(4月4日)

米国は新型コロナウイルス感染者が世界最多となり、死者の予測も「最大24万人」(政府)という国家的危機に直面した。初動の遅れを批判されたトランプ大統領は国家非常事態を宣言し、感染防止の外出自粛策を延長するなど対応に躍起だ。 トランプ氏はこれま.....
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 米国は新型コロナウイルス感染者が世界最多となり、死者の予測も「最大24万人」(政府)という国家的危機に直面した。初動の遅れを批判されたトランプ大統領は国家非常事態を宣言し、感染防止の外出自粛策を延長するなど対応に躍起だ。[br] トランプ氏はこれまで秋の大統領選に向け野党民主党との対立を激化させてきたが、矛を収め結束して未曽有の国難に対処しなければならない。[br] 初動のもたつきは同氏の根拠のない楽観姿勢に原因の一端がある。「米国民のリスクは低い」「すぐに収まる」などと繰り返し、対策に消極的だった。[br] 感染症の司令塔である米疾病対策センター(CDC)も検査キットの開発が遅れるなど拡大防止が後手に回った。[br] この間、感染者は爆発的に増加。3月初め、感染者200人台、死者十数人だった人数が約1カ月で感染者約25万人、死者約6千人になった。[br] トランプ氏が対応に慎重だったのは再選と密接に絡んでいるためだ。同氏が弾劾裁判を受けても一定の支持を得てきたのは好調な経済が背景にあった。しかし、ウイルス対策のため、国民の活動を自粛すれば、経済に悪影響が出て再選戦略に大きな狂いが生じかねない。同氏はこれを恐れ、初動の鈍さにつながったとみられている。[br] だが、株式市場は大暴落、政権発足以来、積み上がってきた「株価上昇分」がそっくり消えた。株価を支持率と考える同氏には大きな打撃だった。とりわけ民主党の大統領候補に、最も恐れていた中道派のバイデン前副大統領が確定する状況となり、焦りは深まったようだ。[br] 同氏は連日、ホワイトハウスで記者会見、自らを「見えない敵」との戦争を指揮する「戦時大統領」として国民にアピールしているが、コロナ危機を事実上の選挙運動に利用しているとの批判が強い。[br] 検査態勢の遅れを「時代にそぐわない規制があったため」としてオバマ前政権に責任転嫁しているのも問題だ。[br] トランプ氏の場当たり的な発言が政府の混乱を招いているのはいつものことだが、民主党の中小企業支援策などを称賛、超党派の取り組みを呼び掛けたのは評価できる。米国だけではなく日本も同様だが、戦後最大ともいわれる今回の世界的な危機はそれぞれの国民の結束がなければ克服できないだろう。[br] トランプ氏には危機に対処するため、政治や社会の「分断と対立」を乗り越え、連帯の動きを強めてほしい。