時評(4月3日)

新型コロナウイルスの感染拡大で、企業の景況感が急速に悪化している。日銀がこのほど発表した3月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、景気の現状を見る業況判断指数(DI)は、最も注目される大企業製造業でマイナス8と、7年ぶりにマイナス.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、企業の景況感が急速に悪化している。日銀がこのほど発表した3月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、景気の現状を見る業況判断指数(DI)は、最も注目される大企業製造業でマイナス8と、7年ぶりにマイナスになった。[br] 中小企業の製造業はさらに悪く、マイナス15。大企業非製造業も、観光・飲食業中心に大きく落ち込んで、昨年12月調査時点のプラス20からプラス8になるなど、日本経済の厳しい状況を示す数字が並んだ。[br] 6月調査までの見通しでは大企業から中小企業までさらに悪化すると予想。景況の「底」は見えていないだけに、政府はスピード感を持ち、万全の対策で企業を下支えする必要がある。[br] 緊急を要するのは、資金繰り悪化で事業の継続が難しくなった企業への支援や、リストラ、就職予定者の内定取り消しといった雇用問題への対応だ。手元資金が少なく、信用度が低い中小企業、それに非正規労働者やフリーランスなど収入が不安定な労働者への対策には特に力を入れるべきだ。感染症が社会的格差をさらに広げることになってはならない。[br] 安倍晋三首相は、2008年に起きたリーマン・ショック時を上回る過去最大規模の緊急経済対策を打ち出すと表明している。中小事業者向けの給付金制度の創設や、収入が落ち込んだ家庭への現金給付、さらに雇用調整助成金の給付率の引き上げなどが目玉になりそうだ。緊急経済対策は来週取りまとめる予定だが、事業規模の総額よりも、国民に安心感を持ってもらえる内容にできるかが問われる。[br] 景気押し上げ効果が期待されていた東京五輪の1年延期が3月下旬に決まった。外出や各種イベントの自粛もさらに広がりを見せ、企業を取り巻く環境は日に日に厳しさを増している。今回の短観調査の回答期限は2月下旬から3月末だが、感染者が急増しだした3月中旬前に回答を済ませた企業も多く、現時点の景況感は発表数値以上に厳しくなっているはずだ。[br] 今後、感染者数が急増し、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が発動される事態になれば、企業マインドをさらに冷え込ませる。当面の対策は直面する危機をどう乗り切るかだが、感染終息時をにらんで、機能不全に陥った部品供給網の再検討、テレワークなどインターネットを活用した勤務形態への移行など、リスク管理策の再構築も併せて考えていかねばならない。