天鐘(3月27日)

「パリは戦時下である。贅沢(ぜいたく)をせず、この生活に慣れることが大事。生きていることが有り難い」。ロックダウン(都市封鎖)最中(さなか)の仏国(パリ)に暮らす作家、辻仁成(つじ・ひとなり)さんの言葉だ▼封鎖から10日。スーパーや食材店、.....
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 「パリは戦時下である。贅沢(ぜいたく)をせず、この生活に慣れることが大事。生きていることが有り難い」。ロックダウン(都市封鎖)最中(さなか)の仏国(パリ)に暮らす作家、辻仁成(つじ・ひとなり)さんの言葉だ▼封鎖から10日。スーパーや食材店、薬局、病院以外は閉められ、仕事はテレワーク。買い物は証明書必携で半径500メートル、1時間以内に限られる。閉鎖空間で生き抜くにはパニックに陥らないことが肝要とか▼違反すれば最大18万円の罰金刑で既に4万人が摘発された。悪質な違反には禁錮刑の重罰も。自由を愛する国で自由が奪われ、警官の目が光る。花のパリ、芸術のローマから人影が消え、ウイルスが闊歩(かっぽ)している▼そして東京。何とか踏ん張っていたが、五輪の延期を境に感染者が急上昇。都が「感染爆発の重大局面」と週末の外出自粛を求め、近接各県も呼応した。このままなら「首都封鎖」の最悪な事態も想定される▼渋谷駅前や目黒の花見など人出は相変わらずの様子。コロナもどこ吹く風の若者に「重大局面」がどれほど伝わったか。自粛を一蹴した埼玉のK―1開催や花見の徘徊(はいかい)など“緩み”のツケは確実に回ってくるだろう▼ニューヨークもロンドンも戦時下だ。気を抜けば突然渦中に放り込まれる。感染媒体は何も首都圏の若者とは限らず、緩みの罠(わな)はそこここに転がっている。「自分一人ぐらい」が敵の思う壺(つぼ)。敵は目を凝らして隙を窺(うかが)っている。