時評(3月25日)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、震源地となった中国に生産拠点を持っていた自動車部品などの工場が生産停止に追い込まれ、日本にある組立工場もストップするなど思いもかけない打撃を受けた。 在庫を極力持たずに生産する、世界中に張り巡らされたサ.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、震源地となった中国に生産拠点を持っていた自動車部品などの工場が生産停止に追い込まれ、日本にある組立工場もストップするなど思いもかけない打撃を受けた。[br] 在庫を極力持たずに生産する、世界中に張り巡らされたサプライチェーン(部品の調達・供給網)が崩れたことによるもので、リスク分散の視点から効率最優先の生産体制の見直しを迫られている。[br] 生産の遅れに加えて中国での交通網が遮断されたことから物流が混乱し、システムキッチンやトイレなど住宅機器の納入のメドが立たなくなり、日本の新築住宅やマンションの引き渡しが期日までにできない事態が起きているという。[br] これは日本企業が人件費の安く、現地に需要がある中国での生産に過度に依存してきたのが裏目に出た結果だ。2000年代初めまで「世界の工場」と呼ばれた中国にこぞって進出した日系企業は、2年ほど前からの米中貿易摩擦を受けて、制裁関税を課せられると中国での生産は採算が取れなくなるとして、拠点を東南アジアに移すなど生産体制の見直しの動きが出ていた。いわゆる「チャイナ・プラス・ワン」と言われるものだ。[br] 中国でコピーやプリンター機能のある複合機を生産してきた京セラは昨年8月にベトナムへ、シャープは昨年6月にタイへの工場移転を決めた。ダイキン工業も中国でのエアコンの部品生産を順次、タイに移している。しかし、今回の新型コロナウイルスのように世界中に感染が広がった場合は、中国以外の国での代替生産も難しくなる恐れがある。[br] 一部には日本に回帰する動きもみられるが、為替リスクや割高な人件費を考えると、労働集約的な組み立て製品は海外でつくらざるを得ない事情がある。[br] ではどうすればよいのか。正解はなく、経営者は難しい選択を迫られる。米中貿易摩擦や新型コロナウイルスのまん延など、想定外のリスクが発生しても、耐えられるだけの方策を事前に考えておく必要がある。[br] これまで構築してきたサプライチェーンは活用すべきだが、効率一辺倒の姿勢から、代替生産ルートを日ごろから検討しておくなど、多少のコストは掛かっても余裕を持たせた生産計画に軌道修正すべきではないか。[br] アジアのどの国で何を生産するのが最適になるのか、日本の製造業は中長期的な生産リスクを踏まえた上での決断が求められる。