日本穀物検定協会による2019年産米の食味ランキングで、青森県産米は「青天の霹靂(へきれき)」と共に「まっしぐら」が初めて「特A」となった。初の2品種での最高ランク取得である。県産米を売り出していく上で好材料であることは間違いないが、ランクの安定性や市場評価、需給バランスを見極めて、適切な生産・販売体制を構築してほしい。[br] 「青天の霹靂」は「特A」取得を至上命令として開発された品種。産地の限定や出荷基準の厳格化により、6年連続最高ランクを維持している。ブランド米としての面目躍如といったところだが、課題は生産者数や作付け面積の伸び悩みだ。[br] 17年産をピークに減少傾向にあり、20年産は作付面積こそ前年比で5・2%増の1631ヘクタールと3年ぶりに増加に転じる見込みだが、生産者は3年連続減の692戸。出荷基準のハードルの高さに加え、業務用米としても人気がある「まっしぐら」の引き合いの強さから、稲作中心ではない兼業農家などの生産品種の変更が考えられる。[br] 「まっしぐら」は06年に市場デビュー。やませに悩まされる県南地方に適した耐冷性の品種だが、安定した収穫量の多さが見込めることもあって「つがるロマン」中心だった津軽地方でも生産農家が増加。現在では、県産米全体で7割を占める主力品種に成長し、農機具大手クボタの関連会社による輸出事業も徐々に拡大している。[br] 今回の食味ランクで「まっしぐら」は、気温と日照時間に恵まれれば「特A」を取得できるという潜在力の高さを示した。これにより今後、生産農家や作付面積の増加に拍車をかける可能性がある。ただ、前年産のランクは二つ下の「A’」だったように、安定性でいえば「青天の霹靂」には及ばず、ランクを維持するには、天候条件に加え、生産者にも相当な努力が求められる。[br] 今回の特A米は54産地品種で、2年連続で50を超えた。東北地方に限っても、岩手県の「銀河のしずく」、山形県の「雪若丸」など16を数える。産地間競争が激化し、単純に「特A」であれば売れるという時代ではなくなってきている。[br] ランクに一喜一憂せず、「まっしぐら」と「青天の霹靂」のバランスを考慮しながら、行政や農業団体、生産者が一体となって、県産米全体の生産の在り方を検討してほしい。その中で「青天の霹靂」を作る農家の収入増につながるような、販売戦略も重要になるだろう。