時評(3月19日)

新型コロナウイルス感染症の拡大によって広がる金融市場の混乱に対応し、日銀が追加の金融緩和に踏み切った。 株価下支え効果のある上場投資信託(ETF)の購入枠を現行の6兆円から12兆円へと拡大。国債についても現行の年80兆円をめどに買い増しを続.....
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 新型コロナウイルス感染症の拡大によって広がる金融市場の混乱に対応し、日銀が追加の金融緩和に踏み切った。[br] 株価下支え効果のある上場投資信託(ETF)の購入枠を現行の6兆円から12兆円へと拡大。国債についても現行の年80兆円をめどに買い増しを続ける。また企業を支援するため、金融機関を通じて企業に低利融資し、社債、コマーシャルペーパー(CP)の買い増しも決めた。[br] 日米欧の当局が協調して実施した金融緩和措置の一環。市場の動揺が金融危機へつながることを回避するとともに、潤沢な資金供給態勢を講じ経済混乱に歯止めをかける狙いを込めた。[br] だが日銀は、マイナス金利政策をさらに強化する「深掘り」は見送った。マイナス金利は金融機関、とりわけ地方の金融機関の収益を大きく圧迫し、地域金融に悪影響を及ぼしかねない弊害が指摘されている。利下げ政策が手詰まりであることが浮き彫りになった。[br] 金融緩和による資金供給や、政府が既に打ち出した中小・個人事業主を対象にした資金繰り支援策は、信用収縮や経営困難が倒産・廃業などを引き起こさないように対応した措置だ。[br] 一方、懸念される経済困難は、感染拡大でモノやヒトの動きが制約されて生産や消費の減少をもたらし、経済活動が収縮する「需要ショック」が大きな要因だ。[br] 観光、イベント関連、運輸、商業など苦境にある分野にとっては、つなぎの資金需要を満たしても、企業活動再生の需要を喚起する対策が取られなければ、経済の落ち込みは回復できない。財政面からの大胆な緊急経済対策が不可欠となる。[br] 安倍晋三首相は、2020年度予算の成立後「今までの発想にとらわれない対策」を講じる考えを表明しており、政府は4月にも緊急経済対策を取りまとめる方向だ。[br] 政府・与党内では中小企業や生活困窮者などへの支援拡充策、国民への現金給付、児童手当の加算などが検討されているという。ただ、家計部門に現金を支援しても貯蓄に回ってしまい、経済活動につながらないとの懸念もある。[br] 消費税率の引き下げ論が与野党内から出ている。賛否が分かれるが、需要喚起策として有効な減税論議を真剣に求めたい。[br] 財政出動に際して赤字国債の発行増もやむを得ないだろうが、財政赤字が危機的状況にあることを忘れてはならない。歳出構造を見直しつつ、健全な形で財政政策を講じる必要がある。