新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の金融市場が混乱している。[br] 9日のニューヨーク株式市場は、原油の協調減産を巡る産油国間の協議決裂による原油相場の急落もあって、投資家のリスク回避の姿勢が強まり大荒れの展開となった。[br] トランプ米大統領は減税策を盛り込んだ経済対策の検討を表明。安倍晋三首相は中小企業への資金繰り支援などを盛り込んだ総額4300億円の緊急経済対策の第2弾を発表した。[br] 国内外の株式市場は一連の対策を好感、ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は急反発、過去最大の下落幅となった前日の半分以上回復した。ただ、これで相場が底を打ったとの見方は少ない。財政や金融政策で根本的に問題が解決するわけではないからだ。[br] 萎縮した投資家や、企業、消費者の動揺する心理を支え、相場を安定化させるには、感染の封じ込めと、予防薬などの開発が重要なのは言うまでもない。[br] パニック的な世界同時株安は2008年のリーマン・ショック以来だ。それ以前の急落は2000年のITバブル崩壊、そして1990年代の日本のバブル崩壊がある。[br] 過去のバブル崩壊は、マーケットに投機的資金が過剰に流入したことが背景にある。いずれも経済の実態を上回る過熱したマネーに対する調整だった。[br] 感染症の世界的まん延による今回の株価急落は、これらの事例とは異なる。先進7カ国(G7)の財務相と中央銀行総裁が3日、動揺する市場の安定化に向けて「さらなる協調行動の用意がある」との共同声明を発表したものの目立った効果がなかったのは、財政、金融政策では限界があるからだ。[br] 市場の動揺は為替相場にも及び、相対的に安全な通貨とされる円を買ってドルを売る動きが強まった。急激な円高は自動車など輸出企業にとってはマイナス。既に部品調達網の寸断や、人の移動の規制で生産活動に影響が生じている。円高が定着すれば業績悪化に拍車を掛けるのは確実だ。円相場も投資家の思惑で不安な動きが続いている。[br] ウイルスの封じ込めに成功すれば市場の動揺は収束するとみられるが、その時期の見極めは難しい。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「パンデミック(世界的大流行)の脅威が非常に現実味を帯びてきた」と9日語った。感染拡大は世界経済にどのような影響を与えるのか。今後発表される各国の経済指標を注視する必要がある。