時評(3月5日)

2020年度予算案の衆院通過を受け始まった参院予算委員会は、新型コロナウイルス感染拡大への政府の対応について質疑が集中した。 安倍晋三首相が要請した全小中高校などの臨時休校に関し、立憲民主党の福山哲郎幹事長らが「学校現場や家庭はとても混乱し.....
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 2020年度予算案の衆院通過を受け始まった参院予算委員会は、新型コロナウイルス感染拡大への政府の対応について質疑が集中した。[br] 安倍晋三首相が要請した全小中高校などの臨時休校に関し、立憲民主党の福山哲郎幹事長らが「学校現場や家庭はとても混乱している」と追及。首相は「学校での集団感染を防ぐため、私の責任で判断した」と理解を求めたが、子どもの罹患(りかん)率が低いといわれる中で、なぜ全国一斉かという疑問への説得力ある答弁は聞かれなかった。[br] 萩生田光一文部科学相は、首相が表明した先月27日まで一斉休校方針を知らなかったと言明。自民党内からも決定過程が不透明だとして検証を求める意見が出ており、今後の教訓にするためにも解明が欠かせない。[br] 休校に伴う保護者の休業補償などに関し、首相は「政府が責任を持って対応する」と強調した。着実に実行に移されるのか見極める必要もあるだろう。[br] クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染も取り上げられた。首相は「完璧ではないかもしれないが、最大限の対応をした」と述べたが、海外からも批判のある下船乗客の処遇などで率直に反省の意を示すべきではないだろうか。[br] 首相は「常に最悪の事態を想定し、あらかじめ備えることが重要だ」として、緊急事態を宣言できる立法措置を講じる考えを表明。既存の新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正する方針だが、野党側が求めた同法適用を拒否したことは、政府対応が後手に回る一因になったように思える。[br] 危機管理対応で大切なのは、政府に対する国民の信頼確保だ。その観点から、政権に近いとされる東京高検検事長の定年延長決定には不可解さが残る。[br] 衆院では森雅子法相への不信任決議案が否決されたが、長年定着してきた検察官の定年に関する法解釈の変更が正当化されたわけではない。答弁を二転三転させた森法相は参院予算委で「官邸の人事介入や忖度そんたくが行われたとの疑念は全く事実無根だ」と人事の適正さを強調した。しかし、民主主義国家として検察官に求められる中立性、独立性が侵食される懸念を肝に銘じるべきだろう。[br] 予算案は憲法の衆院優越規定により今月中の成立が確定。参院審議は時間的制約を受けるが、政府の感染対策などが「場当たり的」との批判が強い中、行政監視を重視する「良識の府」として、その役割を十分発揮するよう求めたい。