天鐘(3月5日)

オイルショックを知らない世代でも、歴史的なこの騒動は教科書で習った。1973年、日本中をパニックに陥れたトイレットペーパーの買いだめ。節電の呼び掛けから物不足の風評が立ち、瞬く間に広がった▼実際には在庫があったにもかかわらず、消費者が買いに.....
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 オイルショックを知らない世代でも、歴史的なこの騒動は教科書で習った。1973年、日本中をパニックに陥れたトイレットペーパーの買いだめ。節電の呼び掛けから物不足の風評が立ち、瞬く間に広がった▼実際には在庫があったにもかかわらず、消費者が買いに殺到。過剰反応で、余計に社会不安が煽(あお)られた。他の日用品も「無くなる」とのデマが飛び、庶民の不安に付け込んだ悪質な便乗値上げも蔓延(はびこ)ったという▼「うわさは“用心するに越したことはない”という人間心理に働きかけ、私たちの行動に影響をおよぼす」。米国の心理学者ニコラス・ディフォンツォ氏は著書『うわさとデマ 口コミの科学」の中で記している▼最初は嘘(うそ)だったうわさが人間を行動に移させ、結果的に本当になってしまうメカニズムを指す。根も無い嘘から芽が生える、とでも言えばいいか。とりわけ自然災害はデマの温床になり、不安がパニックを生むらしい▼50年近く前の騒動は日本人に大きな教訓をもたらしたはずだったが、人は不安に弱いようだ。新型肺炎に端を発し、今回も店の商品棚からトイレットペーパーが消えた。がらがらの売り場がまた不安を煽る▼「流言は知者にとどまる」という諺(ことわざ)がある。根拠のない話が次から次へと広まっても、判断力のある人の所にくると検証されるから、そこで止まるとの意味。確認さえすれば事実は分かるのだ。