天鐘(2月23日)

作家でエッセイストの石田千さんの書く随想を、「乾いてひび割れた大地に染み込んでいく水のよう」と評した人がいた。誰の言葉だったか残念ながら思い出せないが、石田さんの文章を見事に捉えた表現だった▼数年前、八戸市を訪れた石田さんに話を聞く機会があ.....
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 作家でエッセイストの石田千さんの書く随想を、「乾いてひび割れた大地に染み込んでいく水のよう」と評した人がいた。誰の言葉だったか残念ながら思い出せないが、石田さんの文章を見事に捉えた表現だった▼数年前、八戸市を訪れた石田さんに話を聞く機会があった。文章のように静かで温かい雰囲気の持ち主。八戸の街を歩いてスクランブル交差点の音楽に耳をすまし、デパート地下で買ったお弁当を、無料休憩所で居合わせた高齢者と雑談しながら食べたという▼小さなエピソードを慈しむように話していたのが印象的。石田さんにとっては、何でもない日常の全てが言葉で表現するものになっている―。心に染みる文を書く人のまなざしを知る思いだった▼「コラムに挑戦『私の天鐘』」の応募作品を読むうち、石田さんのことを思い出していた。コラムは暮らしの中から生まれる。その時の年齢で感じ方も書き方も変わっていく。今年寄せられた443点から気付かされた▼先週の小紙で発表した選考結果。一般の部で最優秀賞になった中村亜希子さんの受賞の言葉に共感した人も多いのでは。「書き続け、日々の暮らしや言葉を大切にしていきたい」▼シンプルで大事な基本だと思う。10代から80代までが綴った一編一編に小欄も刺激を受け、力をもらった。改めて感謝する。日常と言葉を大事にすれば、身近な所で教わることがある。