天鐘(5月17日)

かつて宇宙人と言えば「火星人」の代名詞だった。最近、宇宙人に纏(まつ)わる話題がぱったり消えたと思ったら、米国に続き、中国の探査機が火星に着陸。宇宙人の夢を一気に蹴散らす米中の宇宙開発競争が現実になっている▼1898年、英国のSF作家H・G.....
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 かつて宇宙人と言えば「火星人」の代名詞だった。最近、宇宙人に纏(まつ)わる話題がぱったり消えたと思ったら、米国に続き、中国の探査機が火星に着陸。宇宙人の夢を一気に蹴散らす米中の宇宙開発競争が現実になっている▼1898年、英国のSF作家H・G・ウェルズの小説『宇宙戦争』には「タコ型の火星人」が登場。77年の火星大接近で盛り上がった宇宙への関心に再び火をつけた▼発達した脳に退化した四肢。古くはこの好戦的なタコ型の火星人が宇宙人の原形になった。映画では20世紀後半に無機質な『グレイ』や人類に友好的な『ET』、21世紀には憑依(ひょうい)型の『アバター』が話題を呼んだ▼国内では1962年に三島由紀夫が異色作『美しい星』を発表。父が火星、母が木星と宇宙から飛来した家族が素性を隠し、核の危機から人類を救う物語。激化する東西冷戦へのアイロニーとして注目された▼人類は未知故(ゆえ)に敵対と友好、または誤謬(ごびゅう)を写す“鏡”として宇宙人を描いてきた。だが、その聖域に米航空宇宙局が2月、15日に中国が探査機を着陸させ、恰(あたか)も火星を舞台とした宇宙開発競争が始まったかのよう▼「火星移住」は人類の夢だが、美名の下に宇宙資源の乱開発や覇権争いが宇宙を舞台に展開されかねない。宇宙開発のルールを定めるべきだ。地下都市に暮らす火星人達は怒り心頭で、「もういい加減に!」と姿を現すかも―。