【自治体幹部のワクチン対応】住民知らせず町長ら接種 住民からは不満噴出

 茨城県城里町役場でワクチン接種の経緯を説明する上遠野修町長=13日
 茨城県城里町役場でワクチン接種の経緯を説明する上遠野修町長=13日
新型コロナウイルス感染を防ぐ「切り札」となるワクチンを巡り、接種を担う自治体の幹部による不透明な取り扱いが相次いで発覚した。茨城、兵庫両県の町長らが町民に知らせぬまま優先的に接種したほか、愛知県西尾市は大手企業トップの予約に便宜を図った。予.....
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 新型コロナウイルス感染を防ぐ「切り札」となるワクチンを巡り、接種を担う自治体の幹部による不透明な取り扱いが相次いで発覚した。茨城、兵庫両県の町長らが町民に知らせぬまま優先的に接種したほか、愛知県西尾市は大手企業トップの予約に便宜を図った。予約がなかなか取れず、我慢を強いられる住民からは不満が噴出。識者も対応のまずさを批判した。[br][br] 町長や教育長ら幹部が4月、医療従事者のキャンセル分を接種した茨城県城里町。上遠野修町長(42)は13日に記者会見し「廃棄すべきかとも思ったが、町長が感染すると混乱を及ぼし、倒れるわけにはいかない。問題ない」と強調した。[br][br] 国は優先接種の対象に「コロナ対策業務で感染者や感染疑いの人に頻繁に接する職員」も含めている。上遠野氏は「集団接種会場で指揮することがあり、医療従事者に準じる」と釈明した。[br][br] ただ「最速で説明の機会を設けた」とも力説したが、接種からは2週間が経過している。[br][br] ▽裏切り[br] 兵庫県神河町の山名宗悟町長(62)は、65歳以上の高齢者集団接種が始まった6日に接種。12日に「廃棄予定の分を有効活用した。公立病院の開設者として病院の会議に週1、2回参加しており、危機管理のため打った」として問題ないとの認識を示したが、翌13日は「感染リスクを考慮した上での対応とはいえ、町民に事前に伝えず信頼を裏切った。申し訳ない」と述べた。[br][br] 大阪府河南町の森田昌吾町長(64)や職員ら約50人も、高齢者向けの集団接種に先行し、医療従事者枠で接種していた。[br][br] 一方、愛知県西尾市は薬局大手スギ薬局の経営法人から要請され、会長夫妻の接種予約を優先的に確保していた。[br][br] 副市長は11日、「市がさまざまな形で支援を頂いており、お返しできないか考えた」と説明。中村健市長(42)は「不適切で弁解の余地はない。心からおわびする」として関係者を処分する意向を示したが、市には「公平性を守ってほしい」など、苦情や問い合わせが数百件寄せられた。[br][br] ▽不信感[br] コンプライアンスに詳しい遠山信一郎中央大法科大学院教授は「ワクチンは人命に関わり、接種希望者が多いため特に公平性が求められる。西尾市は毅然(きぜん)と断るべきだった」と批判。町長らについては「キャンセル分をどう扱うか事前に住民に周知しておく必要があった。行政の不備」と指摘する。[br][br] 一橋大の辻琢也教授(行政学)も「行政が関係者であることを理由に裁量を行使すれば、住民の不信感を招く恐れがある。透明性の高い行動が求められると認識すべきだ」と苦言を呈した。 茨城県城里町役場でワクチン接種の経緯を説明する上遠野修町長=13日