ソフトバンクグループ(SBG)が国内企業で空前の利益を記録した。孫正義会長兼社長が投資事業に本腰を入れ始めてから4年。産油国などを巻き込んだ巨艦ファンドによる先端企業など200社以上への投資は収穫期に入る。成長分野と見定めるや次々に事業の軸足を移す変幻自在の「孫流」は、業績の振れを伴いつつも、デジタル時代に企業が存続する条件を浮かび上がらせた。[br][br] ▽満足せず[br] 「5兆円で満足しない。人工知能(AI)革命は始まったばかりだ」。孫氏は連結純利益4兆9879億円を発表した12日の決算記者会見で「トヨタ超え」を果たした利益を誇りつつ、さらなる成長を目指すと宣言した。[br][br] 1981年に孫氏が創業したパソコンのソフト販売を手掛けるベンチャーは、インターネット普及の波を捉えて固定通信サービスの提供、携帯電話事業などに主戦場を移した。さらに携帯事業が軌道に乗ると自身は投資事業への傾斜を強める。[br][br] 今年3月に上場した韓国ネット通販大手クーパンは保有する株式の時価が3兆円となり、投資額の10倍に「大化け」した。米配車大手のウーバー・テクノロジーズなど他の投資先の評価益も軒並み増加。孫氏は会見で、社会に貢献する企業を育てると強調し「続々と上場企業を生み出したい」と語った。[br][br] ▽稼ぐ力[br] 国内で稼ぐ力を維持する企業をバブル末期の30年前と比べると、ビジネスモデルを大胆に転換した企業が生き残っている姿が目につく。[br][br] 構造改革に苦しんだ低迷期を脱したソニーグループは、ゲームやコンテンツ関連が事業の柱となり、2021年3月期に1兆円を超える利益を計上。利益2位に踏みとどまったトヨタ自動車は、人やモノの移動全般を手掛ける「モビリティー・カンパニー」への転換を掲げ、先端技術都市の開発にも乗り出した。[br][br] 一方、テレビなどに代わる新たな稼ぎ頭の育成に苦戦したパナソニック(旧松下電器産業)や、不正会計問題が発覚した東芝はトップ10の圏外に脱落した。[br][br] ▽ハードル[br] 利益面でひとまず「GAFA」と呼ばれる米巨大ITに肩を並べたSBGだが、投資先企業の株式評価益は金融市場の動向にも左右され、検索サービスやネット広告で圧倒的なシェアを握る米グーグルなどに、安定度ではなお劣る。[br][br] 5兆円が「一回きりで終わるようなことにはしたくない。仕組みとして継続したい」と強調した孫氏だが、高くなった期待値のハードルを上回る利益を稼ぎ続けるのは容易ではない。