新型コロナウイルス流行で日本は最大の危機に直面している。感染者、重症者、死者が各地で過去最多になった。緊急事態宣言は東京、京都、大阪、兵庫の4都府県で延長され、愛知、福岡両県が追加された。5月31日までの期間に感染を減らせるよう対策を凝らすべきだ。[br][br] 感染力が強い変異ウイルスに置き換わるにつれて「第4波」は深刻化した。重症者は若い世代でも増え、全国で計千人を大きく超えている。大型連休を利用した菅義偉首相の「短期集中」策の効果は十分でなかった。今度こそ感染を抑制できなければ医療は逼迫(ひっぱく)するばかりだ。[br][br] 特に大阪府や兵庫県で感染者の入院率が極端に低下し、治療を受けられないまま亡くなる人が続出。介護施設の集団感染で多くが死亡する悲劇も起きた。かつてない医療破綻だ。病院や医師会、行政が連携してコロナ医療に取り組んでほしい。[br][br] 地方にも感染が広がっている。まん延防止等重点措置は北海道から沖縄まで8道県が対象だが、感染増加や医療逼迫度に応じて適用する県を機敏に拡大すべきだ。重点措置は市町村を限定して対策を強化できる仕組みで、積極的に活用したい。[br][br] 政府は宣言延長後には百貨店などを時短営業要請に緩めるが、大阪と東京は大型商業施設に休業要請を継続した。大規模イベントの観客を認めるかでも違いが出た。宣言延長と緩和が交錯し、政府と自治体ごとに対応が異なり迷走感は否めない。[br][br] 大型連休中に検査が減少し、新規感染者は見かけ上少なくなった。検査数が少ないのは日本の対策の弱点であり、まだ引きずっている。検査拡充にさらに努めるべきだ。[br][br] 大型商業施設やイベント会場、飲食店での感染予防策はかなり進んだ。根拠の弱い私権制限を長引かせて人々を苦境に追いやってはいけない。人出抑制に偏らず、日常生活と何とか両立できる対策が望ましい。しかし感染抑制に決め手を欠く中では、宣言の延長、発令が続く展開もあり得る。[br][br] 欧米の感染動向を見ても、ワクチン接種が4割程度に達すれば予防が効く。遅れていたワクチン大量配布が始まったが、首相の目指す「1日100万回接種」は実現するのか。接種予約が集中して混乱も起きており方針通りに進む保証はない。[br][br] 新型コロナで日本が重大な危機に陥る中、東京五輪の聖火リレーは各地で進む。7月に迫る五輪が感染症対策のちぐはぐさを浮き立たせる。この5月はコロナ対策に全力を挙げたい。