【3都府県に宣言発令へ】感染抑止、難しいバランス

 大阪府の新型コロナウイルス対策本部会議を終え、記者の質問に厳しい表情を見せる吉村洋文知事=20日午後、大阪市
 大阪府の新型コロナウイルス対策本部会議を終え、記者の質問に厳しい表情を見せる吉村洋文知事=20日午後、大阪市
政府は20日、新型コロナウイルスの感染が広がる東京都、大阪府、兵庫県に緊急事態宣言を発令する方針を固めた。各知事は「まん延防止等重点措置」ではできなかった幅広い施設への休業要請が可能になる。だが地方への感染拡大リスクや、新たな財政支出といっ.....
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 政府は20日、新型コロナウイルスの感染が広がる東京都、大阪府、兵庫県に緊急事態宣言を発令する方針を固めた。各知事は「まん延防止等重点措置」ではできなかった幅広い施設への休業要請が可能になる。だが地方への感染拡大リスクや、新たな財政支出といった「副作用」も無視できない。抑止効果とのバランスを取りつつ、どこまで強い対策を打ち出すのか。政府や自治体は難しい判断を迫られる。[br][br] ▽方針転換[br] 「人流を抑制して町全体の大きな動きを止めなければならない」。大阪府の吉村洋文知事は20日、府庁で記者団に強調した。「究極を言うと、国民に対して法的にお願いができる仕組みがいると思う。それがない」とも述べ、強い私権制限が必要との認識を示した。宣言発令後にデパートやテーマパークなどに休業を求める構えだ。[br][br] 昨年4月7日、7都府県に対する初の宣言発令はインパクトが大きかった。東京都は映画館やライブハウス、スポーツクラブなど広範に休業を要請。繁華街の人出は大幅に減った。半面、7都府県から地方への人の流れが加速し、政府は宣言対象を全国に拡大。大型連休中の人の移動は激減し、行楽地からにぎわいが消えた。[br][br] 政府は今年1月7日、首都圏1都3県に宣言を再発令。経済への影響を考慮し、飲食店への営業時間短縮要請を中心とした対策に方針転換した。重点措置でもこれを踏襲し、一定の効果はあったものの、クラスター(感染者集団)は工場や学校にも拡大した。専門家の間でも重点措置の効果を疑問視し、宣言の発令を求める声が強まった。[br][br] ▽ジレンマ[br] 重点措置を再び宣言に格上げすれば、効果を得られるのか。国民の「宣言慣れ」や感染力の強い変異株という不確定要素も加わり、専門家は、対象地域の人出や都道府県をまたぐ人の移動を抑える重要性を指摘する。[br][br] しかし宣言対象の地域で昨年並みの厳しい営業制限を設ければ、周辺自治体への人の移動を促し、感染を広げてしまう可能性がある。逆に重点措置と差異がなければ、抑止策として不十分との批判を浴びかねない。知事はジレンマを抱えながら、速やかな方針決定が求められる。[br][br] 知事による対策の効果が見通せない中、政府は宣言を乱発する事態になることを懸念する。官邸筋は「自治体がどうしても宣言を要請するなら、感染抑止策を徹底しなければ意味がない」と指摘。「そこが曖昧なまま発令を求められるのは迷惑だ。感染者が少ない地域の経済まで萎縮させる」と不満を漏らした。[br][br] ▽膨張[br] 3度目となる宣言が発令され時短営業や休業の範囲が広がれば、事業者らから財政支援の拡充を求める声が強まるのは必至だ。新型コロナ対応の特別措置法には損失に見合う補償の規定はなく、代わりに都道府県が「協力金」を支払っている。[br][br] 協力金は国が8割を負担し、多額の支出を2020年度のコロナ対策予備費で賄ってきた。21年度予算でも5兆円の予備費を確保しているものの、財務省幹部は「何でもかんでも認めていては切りがない」と際限ない膨張を懸念する。吉村知事は19日、記者団に「宣言発令は国の決定権。支援策がセットになるのは当然のことだ」と政府をけん制した。 大阪府の新型コロナウイルス対策本部会議を終え、記者の質問に厳しい表情を見せる吉村洋文知事=20日午後、大阪市