社員が希望すれば65歳までの雇用が義務付けられている高齢者雇用安定法が改正され、企業は4月1日から70歳まで就業機会を確保するよう努力義務が課せられた。[br][br] 企業にとっては継続雇用と定年延長・廃止に加え、個人事業主として業務委託契約を結ぶなどの対応を迫られる。形の上では高齢者の雇用拡大につながるが、組織の高年齢化が進み、会社としての活力が低下するリスクがつきまとう。[br][br] 毎年35万人から40万人が定年で退職しているが、このうちの希望者を働いていた会社やその関連会社だけで抱えるのは無理がある。かつては下請け企業に退職者を押し込めていたが、いまではそうしたことは嫌われる。会社で仕事が見つかったとしても、自分のキャリアを生かしたものはほとんどなく、補助的な仕事が大半で、デジタル化などの変化に追いつけないシニアは厄介者扱いされがちだ。[br][br] 職探しには「ハローワーク」があるが、求人の大半はそれまでの経験を生かすことができない単純作業で、納得いく仕事は見つけにくい。[br][br] そうした中、自分に合った仕事を探そうと、人材データベースに登録する退職した高齢者が増加。人手不足の中堅・中小企業で求められて働くため、マッチングさえうまくいけば、頼りにされる貴重な戦力となり、新たな生きがいにもつながる。[br][br] 専門知識を生かした商品開発、効率的な営業支援、デジタル化など大企業では当たり前のことが、シニアを通じてサポートしてもらえる。中には社長に評価されて社員として再雇用されるケースもある。[br][br] 厚生労働省の外郭団体の産業雇用安定センターにある「キャリア人材バンク」では、2019年度に人材登録していた中高年退職者1921人が新たな仕事に就いた。シニア人材を信用金庫など地域の金融機関の取引先企業に仲介してきた一般社団法人新現役交流会サポートによると、紹介した会社は4千社を超え、約5割の会社で仕事を見つけられているという。[br][br] この数年、多くの企業が社員の副業、兼業を認めるようになった。企業側も社外で通用するキャリアを身につけてもらうことで、定年になった社員の雇用義務の軽減にもつながる。[br][br] 大企業といえども、終身雇用維持では生き残れなくなった時代。70歳まで同じ会社で働くのも選択肢ではあるが、定年後を見据えてスキルを磨き、「新天地」での挑戦も視野に入れたらどうか。