民泊施設が遺体安置所に/大阪 法規制なく野放し状態

 遺体の一時保管場所として利用されている民泊施設=3月、大阪市
 遺体の一時保管場所として利用されている民泊施設=3月、大阪市
大阪市住吉区の民泊施設が遺体の安置場所に使われていることが判明し、近隣住民とのトラブルに発展した。葬儀業者から火葬までの一時安置を請け負うビジネスは全国でも広がっている。ただ、運営資格や施設の条件など法規制はなく「野放し状態」なのが実情だ。.....
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 大阪市住吉区の民泊施設が遺体の安置場所に使われていることが判明し、近隣住民とのトラブルに発展した。葬儀業者から火葬までの一時安置を請け負うビジネスは全国でも広がっている。ただ、運営資格や施設の条件など法規制はなく「野放し状態」なのが実情だ。住民から苦情を受ける自治体側も対応に苦慮する中、専門家は法整備の必要性を訴えている。[br][br] 住宅街の一角にひっそりとたたずむ古民家。門の壁が黒ずんだこの民家には、昨年12月ごろから遺体が搬入されるようになった。近くに住む70代男性は眉をひそめて語る。「布に巻かれた状態で遺体が運ばれ、庭先に置かれているのが外から見えた。説明も何もなく、困惑している」[br][br] 大阪市などによると、民家は2019年8月に市から民泊の認可を得た。オーナーである韓国籍の男性は市に対し「1カ月に2~3体を受け入れている」と説明。葬儀関連の仕事でドライアイスやひつぎを販売する中、葬儀業者からの依頼で請け負っていたという。[br][br] 男性は取材に対し、新型コロナウイルス禍で民泊の利用客が見込めなくなったため、倉庫代わりで利用していたといい「業者からは気持ち程度のお金をもらっていたが、法律に違反しているわけではない」と強調。一方で、住民からの反発を踏まえて預かりをやめる意向を明らかにした。[br][br] なぜこうした事例が起きたのか。背景には遺体安置の需要の高まりがあるとみられる。[br][br] 遺体は葬儀場で告別式などを開かない場合、直接火葬場へ送るのが一般的だ。家族や地域のつながりが希薄化する中、こうした「直葬」は費用が抑えられる側面もあり、近年増えている。[br][br] ただ、墓地埋葬法上は24時間を経ないと火葬できない。自宅で保管できない場合に、一時保管所を提供する葬儀場もあるが、都市部では高齢化で死者数が増え、火葬の順番待ちが生じている。そのため「遺体ホテル」などと銘打ち、一時的に預かるビジネスが成立するというわけだ。[br][br] 冠婚葬祭業の「ラック」(福岡市)が運営する遺体安置施設「福岡直葬センター」の担当者は「1年間で400件以上請け負っており、高齢化で今後も需要は増えていくだろう」と語る。一方で「近隣住民に周知せず、費用を抑えるために倉庫などで保管している事業者もいると聞く。大阪のような事例は他の地域でも一定数あるのではないか」との見方を示す。[br][br] 葬送の調査研究をしている一般社団法人「火葬研」(東京)の武田至代表理事は「地元理解を得ずに設置した遺体ホテルや保管施設がトラブルになることはこれまでもあった。事業を行う際の資格を設けるなど国による一定の規制が必要だ」と訴えている。 遺体の一時保管場所として利用されている民泊施設=3月、大阪市