天鐘(3月25日)

前回の東京五輪は、三波春夫の「東京五輪音頭」が盛り上げた。〈あの日ローマでながめた月が/今日は都の空照らす〉。明るい歌声と、満面の笑顔が日本中に広がった▼2番は、経済成長を遂げた姿を披露できる喜びを歌う。〈待ちに待ってた世界の祭り/西の国か.....
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 前回の東京五輪は、三波春夫の「東京五輪音頭」が盛り上げた。〈あの日ローマでながめた月が/今日は都の空照らす〉。明るい歌声と、満面の笑顔が日本中に広がった▼2番は、経済成長を遂げた姿を披露できる喜びを歌う。〈待ちに待ってた世界の祭り/西の国から東から/北の空から南の海も/こえて日本へどんときた〉。時代を包んだ高揚感は、残念ながら今回はない▼史上初の五輪延期決定から1年がたった。誰もが今ごろはコロナを克服しての祝祭ムードを想像していたはずである。厄災は終息どころか、再び勢いづく気配。募るのは、果たしてこの1年は何だったのかという思いだ▼いまだに立場の違いで世論は割れる。加えて、女性蔑視発言の組織委トップや、演出統括役の言動を巡るゴタゴタが水を差す。「復興五輪」も「おもてなし」も既に遠い昔。主役であるアスリートたちの思いは置き去りだ▼本番は海外からの観客やボランティアは受け入れない。「どんとくる」はずだった西や東の国の人たちには、どんな平和の祭典と映るだろう。初めてづくし。成否は未知数のオリ・パラである▼今日、いよいよ聖火リレーが出発する。相次ぐ辞退者も、逆風の象徴だろう。いばらの道に違いない。けれども最後はやはり都を照らす月を、感動と共に見上げたい。ゴールへとつないでいくのはあくまでも希望。そう信じて見守りたい。