ダイハツ工業が自社生産として約10年ぶりにハイブリッド車(HV)に再参入する。政府は2035年までに乗用車の新車販売全てをHVを含む電動車にする方針で、開発を加速させる。21年中に小型車を投入、その後に軽自動車へ広げる方針だ。地方を中心に「生活の足」として支持される軽自動車でHV化による価格上昇をどれだけ抑えられるかが焦点となる。[br][br] 21年中に投入するのは小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「ロッキー」となる見通し。親会社のトヨタ自動車のシステムを基に開発を進めている。[br][br] ダイハツは05年に初めて軽商用HVを発売したが約220万円と高額で、生産を終了した10年ごろまでに数百台しか売れなかった。ダイハツ幹部は「軽自動車は庶民のげたみたいな存在。顧客が買えない値段で売っても意味がない」と話す。[br][br] 政府による「2030年度燃費基準」も重くのしかかる。新車の燃費を30年度までに16年度実績比で約3割改善するよう求める内容で、消費者が税優遇を受ける際の重要な要素となる。ガソリン車の品ぞろえだけでメーカーが生き残ることは難しくなっている。[br][br] ライバルのスズキは「マイルドハイブリッド」と呼ばれる簡易式を採用した軽自動車を既に展開している。ダイハツの別の幹部は「菅義偉首相があそこまで脱炭素を強調したら、半端なHVじゃ許されない」と明言。「ストロングハイブリッド」と呼ばれる本格的なHVを投入する意向だ。[br][br] ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表アナリストは「ダイハツは人気車種も軒並み新燃費基準には届かず、屋台骨が揺さぶられている。かなりの量のHVが必要になるが、政府の制度設計を踏まえてコスト上昇に見合った商品を提案できるかどうか手腕が試される」と指摘した。