少子高齢化や過疎化など社会情勢の変化に対応するための重要課題がようやく解決への道を歩み始めた。所有者が死亡した後、放置されるなどして所有者不明になった土地問題の解消を目指す民法、不動産登記法の改正案や新法案が国会で審議入りしたのだ。[br][br] 相続登記を義務化し、怠れば過料を科すなどの内容。速やかに成立させ、新制度を実施していきたい。公共事業など行政の施策も阻む法の壁を早く取り除く必要がある。[br][br] 国土交通省の2017年度調査によると、不動産登記簿で所有者の所在が確認できない土地は全国で22%に上る。災害や事故につながり、防災や復興の支障になるだけでなく、ごみの不法投棄に使われるなど近隣住民の生活への影響も大きい。[br][br] 法案は二つの側面から新しい仕組みを導入している。[br][br] 第一は、このような土地の発生を予防する制度づくりだ。一定の要件を満たせば親族から相続などで取得した土地の所有権を放棄し、国庫に帰属させることができる新制度に注目したい。被災者が避難する宅地の造成などに役立つだろう。[br][br] また、相続開始から10年以上たっても相続人の中に所在不明者がいる場合、不明者の共有持ち分を他の共有者に取得させる裁判ができる制度も提示された。遺産分割の合理的解決は所有者不明土地の発生予防になる。[br][br] 第二は土地利用を促進するための見直しだ。共有者が不明で、その持ち分を取得したいとの申し立てがあれば、裁判所が相当金額の供託を条件に裁判ができる制度が示された。共有者全員の同意は不可能でも、複雑な共有関係が整理でき、有効な土地利用が可能になる。[br][br] 民法の隣接地関係に規定がない対策も法案には見える。所有者不明の隣地を経由して電気・ガス・水道などを受ける設備を設置できる制度だ。ライフラインのパイプ設置が可能になり、生活の質向上に役立つ。[br][br] 所有者不明土地管理人や不在者財産管理人を置くなど新たな管理制度も提案されている。[br][br] これらの新制度を実施する上で大事なのは国と地方自治体との連携の強化だ。法務省と自治体との綿密な協議・打ち合わせはもちろん、裁判所や他省庁との擦り合わせも欠かせない。[br][br] 例えば、所有者不明土地の国庫帰属を承認するには事実の調査が求められる。宅地や森林、農地の調査に関する専門知識を持った職員の派遣や技術的支援、地域やNPOへの情報提供などを幅広く進めてほしい。