天鐘(3月14日)

大相撲の歴史をさかのぼってみると、江戸の昔は興行の日数が今に比べて随分少なかった。場所は春と秋に10日ずつ。合わせて20日間取れば良かった時代もある▼〈一年を二十日で暮らす良い男〉とは、それだけで十分に生活できた当時の相撲取りたちを、やっか.....
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 大相撲の歴史をさかのぼってみると、江戸の昔は興行の日数が今に比べて随分少なかった。場所は春と秋に10日ずつ。合わせて20日間取れば良かった時代もある▼〈一年を二十日で暮らす良い男〉とは、それだけで十分に生活できた当時の相撲取りたちを、やっかみ半分で詠んだ川柳である。それでも実際の力士は地方巡業などで忙しく、言われるほど優雅な暮らしでもなかったらしい▼「良い男」と、今こそ皮肉られそうなのは白鵬、鶴竜の両横綱だろう。2人ともけがや体調不良などで最近の場所は休みっ放しだ。目に余る“職場放棄”に、さすがの横審も異例の「注意」である▼今日からの春場所は、共に崖っぷちのはずだった。白鵬は再起を期して土俵に上がるが、進退を賭ける鶴竜は、またもやけがで休場するらしい。「次こそ」とは本人の弁だが、置き去りにされたファンは今回もため息である▼〈相撲取には何処(どこ)ようて惚(ほ)れた/稽古帰りの乱れ髪〉。心身を磨き上げた力士の、春風駘蕩(たいとう)とした風情を古い都々逸は唄(うた)う。そこから漂う「潔さ」や「粋」が、大相撲本来の魅力でもあったはずだ▼どれだけ休んでも番付が落ちない最高位が、その地位にしがみついているとは思いたくない。一方で〈二日まけて老といはれる角力取〉(松瀬青々)の句もある厳しい世界なのは、ご本人たちも無論心得ていよう。綱の重みを考える場所になる。