【震災10年・地域と原子力】(3)宮下宗一郎むつ市長

立地地域の負担について説明する宮下宗一郎市長
立地地域の負担について説明する宮下宗一郎市長
―東京電力福島第1原発事故をどう捉える。 原発で水素爆発が起きている中、国土交通省職員としてフランスへ出張した。パリで「日本が大変なことになっている」と言われてテレビをつけると、全世界のニュースを報じるチャンネルが事故の映像を1日中流してい.....
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 ―東京電力福島第1原発事故をどう捉える。[br] 原発で水素爆発が起きている中、国土交通省職員としてフランスへ出張した。パリで「日本が大変なことになっている」と言われてテレビをつけると、全世界のニュースを報じるチャンネルが事故の映像を1日中流していた。国際社会に与えたインパクトは大きかった。[br][br] 原子力の安全神話が音を立てて崩壊し、国民が次にどの道へ進むべきかを真剣に考える機会になった。今まで推進だった人も疑問を持ち、反対やグレーゾーンの人が多くなっている。[br][br] 現時点で国は原子力を先に進めると選択している。ただ反対が多い状況下、国には重大事故を起こさず、うまく原発と共存する政策を行う責務がある。[br][br] ―立地地域の負担は。[br] 立地地域の住民は事故後、より重い負担を背負わされている。国民の多くが反対している事業を担うことで「金のため」と言われ、地域がおとしめられている。[br][br] ただ、批判する人の多くは住環境に恵まれた都会の人だ。「スターバックス」も「びっくりドンキー」もない場所に生きる私たちも同じ日本人で、地域に誇りを持って生きている。原子力事業があるだけで尊厳や誇りを傷つけられるのはおかしい。[br][br] ―国に政策的に求めることは。[br] 預かる核燃料が搬出されることをはっきりさせてほしい。電源構成比率で20~22%が目標とされる原発は何基稼働するのか。使用済み核燃料は何トン出て、うち何トンが六ケ所村へ行き、残り何トンを全国の中間貯蔵施設で保管するのか。[br][br] 政治の約束事にはレベルがある。まずは法律の次に重い、エネルギー基本計画など閣議決定のレベルで燃料の行き先をある程度示すべきだが、示しきれないならそれ以下の閣議了解といったレベルで説明すべきだ。立地地域が安心して政府との決め事だと言えるようにすることが必要だ。[br][br] ―原子力の交付金に依存してしまうという懸念は。[br] あらゆる産業には栄枯盛衰がある。一つの自治体や国が唯一の産業やエネルギーにこだわり続けると必ず失敗する。炭鉱の街として栄えた北海道夕張市は、メロンという強みもあるのに関連産業が市内で十分に育っていなかった。一つの産業に依存する街に未来はない。[br][br] 今、私たちは未来を構築していくための財源としてチャンスをもらっているだけだ。依存ではなく、転換するための財源として活用しているにすぎない。[br][br] 中間貯蔵施設が供用開始し、新税が入ってきたとしても教育や1次産業、新しい産業の創生に使い、50年かけてこの産業から脱却する道筋をつくっていく。立地地域の負担について説明する宮下宗一郎市長