【震災10年】高齢者施設、迅速な避難限界 住民「共助」不可欠

施設の防災訓練には尻引町内寿楽荘救援隊も参加。万一の時はすぐに駆け付けられるように常に施設と連携を取っている(寿楽荘提供)  
施設の防災訓練には尻引町内寿楽荘救援隊も参加。万一の時はすぐに駆け付けられるように常に施設と連携を取っている(寿楽荘提供)  
自力での避難行動が難しい高齢者が入所する介護施設では、ひとたび避難が遅れると甚大な被害になりかねない。有事には一刻も早い避難が求められるが、介護士不足が課題となっている現状では介護職員の対応には限界がある。そこで頼りになるのが地域住民の協力.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 自力での避難行動が難しい高齢者が入所する介護施設では、ひとたび避難が遅れると甚大な被害になりかねない。有事には一刻も早い避難が求められるが、介護士不足が課題となっている現状では介護職員の対応には限界がある。そこで頼りになるのが地域住民の協力だ。全国各地で大規模災害が頻発している近年、特に少子高齢化が進行する地域では住民同士で助け合う「共助」の中核となる自主防災組織の意義がますます高まっている。[br][br] 大規模災害発生直後は建物の倒壊や火災、道路の寸断など広範囲で被害が多発し、消防などの対応能力を大幅に超えることも想定される。その際に活躍が期待されるのが、住民でつくる自主防災組織。公的支援を待つだけでなく、住民が協力して初期消火や人命救助を担うことで、1人でも多くの命を救える可能性が高まる。[br][br] 八戸市市川町の特別養護老人ホーム「寿楽荘」では、近くの尻引町内会の協力を得て、地域住民で「尻引町内寿楽荘救援隊」を組織し、有事に駆け付けてもらえる態勢を構築している。[br][br] 自力歩行が困難な高齢者が多い特養施設では、避難となるとより多くの人手が必要だ。特に介護職員が少ない夜間に災害が発生すると、避難が大幅に遅れ、最悪の事態も起こりうる。[br][br] 施設側は尻引町内会に協力を呼び掛け、趣旨に賛同した地域住民が1996年に救援隊を結成。介護施設のために地域住民が防災組織をつくる事例は県内でもまだ珍しく、救援隊は新しい共助の形となった。[br][br] 現在のメンバーは16人で、ほとんどが自主防災組織も兼ねて活動。幸い、これまでに入所者の救助活動に至ることはなかったものの、日頃から施設と共同で防災訓練を行っているほか、地震や台風など避難の可能性がある場合は、施設に連絡をするなどしてすぐに駆け付けられる態勢を整えているという。[br][br] 施設を運営する社会福祉法人寿栄会の田名部厚子理事長は「万が一の時に救援隊が駆け付けてくれるという安心感があり心強い。施設にとってなくてはならない存在」と信頼を寄せる。[br][br] 同町内会の谷地秀典会長は「地域の人たちの『見守ってくれてありがとう』という言葉が励み」と胸を張る。ただ、隊員の高齢化で、今後の活動に一抹の不安もある。若い人にも参加してもらえるようにさまざまな場面で救援隊の活動を発信していきたい考えで、「これからも施設と連携して地域のために活動していきたい」と使命感に燃えている。施設の防災訓練には尻引町内寿楽荘救援隊も参加。万一の時はすぐに駆け付けられるように常に施設と連携を取っている(寿楽荘提供)